社長だけでなく経営メンバーを育てる

バトンを渡す側も、社長から会長へと自分の役割をうまく変えていく必要がありますね。

泉谷:そうです。社長の座を譲ったら、会長として執行部隊をしっかりと後押ししてあげる。会長として、財界も含めて社会のことを見通す立場になるわけです。社長に譲っているのに執行について口を出せば二頭政治になるし、社長は自由にできません。泉谷は権力を手放していない、と言われるようなということのないように、きれいに渡そうと思いました。

 ですから、社員に迷いを与えるような社長交代はダメですよね。企業は永続性が大事です。僕らはリレーのランナーで、常に区間区録を狙う。そして、区間最高記録を出せるランナーをどれだけそろえられるか。そのために必要なのが後継者育成計画(サクセッション・プラン)です。

アサヒGHDの後継者育成計画には、何人ぐらいが候補になっているのでしょうか。

泉谷:今、経営幹部クラスでだいたい30~50人、部長クラスで50人、その下の40歳前後で100人をプールしています。彼らを順番に研修させ、評価して、配置を変えながらいろいろな経験をさせています。若いうちはそのリストは入れ替えがありますが、上の集団になるにつれて絞られていきます。

 こうする目的は、ただ社長を選ぶためだけではありません。社長と一緒に経営していくチームのメンバーをそろえるためです。

 かつては経営環境の変化が少なかったから、いわゆるワンマン型のリーダーが組織を引っ張ることがよくて、世間もそれを評価しました。でも、これだけ変化係数が多くて、グローバル化が進んでいると、チームリーダー型の社長、チームをコントロールできる社長を作らないといけない。

 例えるなら、かつては「金太郎飴集団」でよかったけど、今は桃太郎軍団がいいんですね。桃太郎のように、それぞれ特徴が違う、キジ、サル、犬というメンバーを、きび団子というインセンティブで動かすというわけです。

年功序列の制度のままでは、社長を支える経営メンバーもそろえられないことになるのでしょうか。

泉谷:そうですね。ですから育成の仕組みを入れると同時に、人事制度のパラダイムを変える必要もあるでしょう。人事制度って何となく年功序列で上がってきて、このぐらいの年齢になれば、これはできるといった形だったと思います。でもこれは間違っていると思います。

 まず経営側がビジョンを持ち、中期経営計画を作ります。その戦略を実行に移すために、どういう能力が必要なのかを洗い出し、社員一人ずつの能力一覧表を作ってランク付けする。一方で、社員は自らのキャリアの目標を持って、自ら伸びるように動いていくわけです。

 会社がきちんとマップを示せば社員は皆頑張って勉強するようになり、能力を発揮できるようになる。それが適材適所につながり、企業は強くなっていきます。よく経営者が「社員が成長しない」というんだけど、それは違う。成長しない理由は、会社が仕事をきちんと配分できていないからなんですよ。

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