行方の分からなくなった1000万円

 母の死亡後、長男と次男はしばらく、社会保険の手続きや葬儀などで忙殺され忙しい日々を過ごしました。そして、四十九日後、そろそろ遺産の分割協議をしないといけないね、ということになりました。

 そこで長男と次男は二人で祖父のところにキャリーバッグを受け取りに行きました。ところがです。何かと理由をつけて、そのキャリーバッグを出したがらない祖父。強い口調で祖父に迫ったことで、ようやくキャリーバッグを取り戻しました。

 しかし中身を確認にしてみたら現金が明らかに減っているのです。

 改めてお札の数を数えたところ4000万円が2000万円しかありません。問い詰めたところ、祖父はのらりくらりとかわしていましたが、最終的には、「1000万円はギャンブルや株式投資に使ってしまった」と白状したのです。

 それでもあと1000万円ほどが足りません。祖父に聞いても自分が使ってしまったことは頑として認めません。「元々3000万円しかなかったのではないか」とまで言い出す始末でした。

 度重なる協議の結果、最終的にはギャンブルや株に使ってしまった1000万円は祖父が責任を持って返してくれることになりました。しかし残りの1000万円は行方が分からないまま、結果として帰ってくる見込みはありません。

 よくよく祖父から話を聞いてみると、この現預金4000万円は自分のものだと思っている節がありました。

 というのも、祖父からすると可愛い一人娘が離婚後、女手一つで息子2人を育てている姿が不憫でならないと思っていたらしいのです。そこで母(娘)の生前、事あるごとに祖父は母に現金を贈与していたとのことでした。

 つまりキャリーバッグにあった4000万円のほとんどは母が稼いだお金ではなく、贈与の積み重ねだというのです。ですので、元々は祖父のお金。そのお金が余っていたのだから、元の持ち主である自分で使って何が悪いのか、という考えが言葉の端々に見え隠れしていました。

 娘が亡くなった今、元は自分たちのお金なのだから自由に使ってもいいのだろうという気持ちがあったのでしょう。