遺言とは異なる遺産分割を禁じる旨を明確に書く

 今回はそこまでひどいケースではありませんが、長男が弁護士を立ててきたという「理不尽な」ケースでした。

 長男の弁護士は市役所がやっている法律無料相談で会った弁護士でした。通常であれば、弁護士は「有効な遺言があるにもかかわらず、遺産分割の協議をするんですか?こんなケースで争ってもお金と時間がかかるだけで、あなた(長男)にとっても意味がないですよ」と論すはずです。あまりにも理不尽な言いがかりだからです。

 ところが、結局長男は弁護士を立ててきたので、次男も仕方なく対応を弁護士に依頼することになりました。

 長男と次男は弁護士を介して話し合いを続けていますが、なかなか結論は出ず、いまも「遺産分割調停」の真っ最中です。民事訴訟には至っていないものの、すでに弁護士費用などでまとまったお金がかかっています。

 また、ここまでも既に1年近くが経っており、ストレスも多大です。このように人の意見を聞かない相続人が一人でもいると、否が応でも揉め事に巻き込まれることになります。

 通常であれば、遺言を作成することでその多くの争いは未然に防がれることが多いでしょう。しかし、変わった親族がおり、揉めることが事前に予想される場合、公正証書という形での遺言作成はもちろんのこと、遺言の内容についても、遺言とは異なる遺産分割を禁じる旨を明確に書くなど、対策が必要です。例えば、遺言内容が確実に実現されるように弁護士を遺言執行者として指定しておくなど、できるだけ揉め事を予防できるものにしておくことが賢明と考えられます。

 さらには今回のケースは、生前贈与や譲渡など、適正な取引価格とエビデンスを遺しながら、資産を早めに移転すべきだったのではないか?とも思われる事案です。また、話の分かる相手では法は有効に機能しますが、理屈の通じない相手だと、法があっても揉めるということを痛感させられる事案でした。