「遺留分減殺請求」とは?

 しかし、あれから十数年が経ち、長男としては納得がいきません。長女と顔を合わせるたびに怒りに狂います。電話で罵倒することもしばしば。相続手続き自体は遺言執行者が長女のため、銀行口座の名義変更や不動産の登記など多くの事務作業を長女が行います。

 母と長女は同居していました。長男も同じ敷地の中で別に家を構えており、門は同じです。よって門で顔を合わせるたびに、長男は妹である長女を責め立てました。

 長女は遺言執行者として粛々と相続の作業を進めますが、相続税の申告が終わるころにはさすがに疲れ果てます。PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは言わないまでも、精神的にかなり参ってしまいました。家の電話が鳴っただけでも「長男からの電話でまた罵倒されるのではないか」と電話を恐れる始末。病院にも一時期通うことになるほど、彼女にとっては強いストレスとなっていました。

 結局、長男は自らの遺留分を確保するため「遺留分減殺請求」の意思表示をしたうえで、長女に対して家庭裁判所に訴えを起こしました。その結果、長女は相続財産全体の4分の1を長男に現金で支払うことになりました(長男は先に500万円を受け取っていますので、その差額)。

 この家族にはアパートがあったり土地を保有したりとお金持ちと思われがちですが、実際にはそうではありませんでした。というのも、アパートは築年数が古く、駅からも遠く、しかもきちんとリフォームなどをしてこなかったため、入居率も低かったのです。よって、資産はあるものの現預金が貯まっておりませんでした。

 相続税も高かったため、長男から遺留分減殺請求をされた時には、現預金はほぼ枯渇した状況でした。遺留分をやっと払い終えた後、この兄妹はほぼ口を聞かなくなりました。母の3回忌にも兄を呼ばず、長女だけで行いました。

 母は遺言をきちんと作ったにもかかわらず、争う族を避けることができませんでした。このようなことが遺言を遺したケースでも多々あるので、一般的には「遺留分に配慮した遺言を作るべき」と言われるのです。

 さて、私がこの家族と出会ったのは3回忌の後だったのですが、このご家族には後日談があります。それは更正の請求です。

 更正の請求とは、収めすぎた税金があったことが分かった場合、減額更正をすることで納税者に税金を還付する制度です(要は税の払い過ぎに対して還付請求をするということ)。

 長女は広い土地を相続したのですが、当初の相続税申告ではその土地の評価が過大であり、土地評価の減額要因を複数使うことで相続税の一部を取り戻すことができたのです。

 地主など広い土地を保有している場合、相続税の当初申告の時に土地の評価が低くなる特例を使わずに申告してしまっているケースが多いのが実情です。