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 日経ビジネスの年末恒例の特集「謝罪の流儀」では、これまで主に不正を発表する記者会見の場での企業の振る舞いを検証してきた。しかし、取引先や消費者に謝罪する際も守るべき流儀はある。約3万6千人の秘書が会員となっている、ぐるなびのコミュニティサイト「こちら秘書室」で担当室長を務め、ビジネスマナーに詳しい渡辺華織氏に顧客に対する謝罪のポイントを聞いてみた。

渡辺華織氏。ぐるなびの秘書会員組織「こちら秘書室」の担当室長。航空会社の客室業務部で秘書を務めたほか、大手金融、大手小売り、外資系コンサルタントで社長・会長秘書を歴任。

今年の企業不祥事では、昨年に引き続き品質問題が相次いだ印象です。顧客への報告・謝罪が、製品の安全確認の面からも重要だと思いますが、謝罪のタイミングはいつ頃がいいのでしょうか。

渡辺氏:当然できるだけ早く伺って誠意を示すことが大事です。ただ、こちらのミスで顧客が大変な状況に陥っているわけですから、迅速かつ失礼のないタイミングを見極めなければいけないのが難しいですね。急ぎすぎてふさわしくない服装でお邪魔するのもまずいです。

 謝罪でも情報収集が大事です。先方の秘書、もしくは営業窓口に話を聞いてみる。そうした聞き取りができそうもないケースなら、取り敢えずお邪魔して、1分でも2分でもお話しできるまで待たせていただくというのも一手です。実際には会えなくても、誠意を示すことは重要です。

品質問題のように複雑な問題だと、早く説明に行っても、背景を十分に説明できないこともありそうです。

 あまり問題を掘り下げようとすると時間が経ってしまう。まず重要なのは誠意を示すために駆けつけること。そしてその場で原因追及や改善策をまとめる作業を続けていること、逐次経緯を報告することを約束する。

先ほど少し話に出ましたが、服装はやはり地味な格好にした方が良いでしょうか。

 私は自分のボスが着用できるように、必ず黒に限りなく近い濃紺のネクタイをいつも常備していました。その日のスーツが色物、柄物の場合は新しく買うしかないですね。

スーツも濃紺ですか。濃いグレーでもダメですか。

 やはり無地の濃紺がベストです。どうしても急ぐ場合は仕方がない時もありますが、時間に余裕があれば念には念を入れるに越したことはないです。

就活生みたいなスタイルですね。

 そう。服装での自己主張は必要ありません。謝罪会見を見ていても、やはり柄物のネクタイなどをしていると私はどうしても気になってしまいます。会社として、礼儀や作法の知識がないと思われてしまいますよね。礼儀作法を気にしない人も多くなっているのかもしれませんが、時間が許すのであれば、やらない理由もないと思います。

 礼儀作法を守らない格好で謝罪の場に出てしまうのは、秘書の力量の問題かもしれませんね。ちゃんと服装を注意できるような関係性をボスと築けているかが重要です。

「かえって恐縮です」を目指す

 誰が謝罪に行くか、誰に謝罪に行くかという点はどうでしょう。

 小さなミスなら当人が謝罪に伺えばいいのですが、そのレベルでも上司が付き添いでいけば、誠意を示すことにつながります。大勢で行くのはかえって良くありません。向こうが納得いただけるレベルの人間が最小限で行くべきです。

謝罪会見でも、見る人の想定を上回ると成功すると専門家はよく言っています。

 同じことですね。「わざわざご足労いただいて、かえって恐縮です」と言われるぐらいの人が行く。

誰に謝りに行くかという点では、迷惑をかけたチームや事業の責任者になります。担当者レベルで留めてしまうと、情報が共有されずに「ちゃんと謝罪をしなかった」という評価になるリスクが残ります。

 その場で決着をつけるためにも、相手先にはある程度責任を持つ方に出ていただくしかない。もし責任者に面識があるならこちらから指名してもいいし、どなたか分からなければ「上司の方にもお会いしたい」とお願いする。「そこまでしていただかなくて結構」と言われても、後日時間を作ってもらうようお願いしておいたほうがいいですね。