2017年に引き続いて18年も相次いだ製造業の品質問題。不正が次々に明るみに出て、何度も謝罪を迫られたのがSUBARUだ。一方、日本ガイシは1回の謝罪会見でダメージを最小限に抑えた。両社の違いはどこにあったのか。

 「深く反省いたしまして、二度とこのようなことが起きないよう万全を尽くして参る所存でございます」

 完成車検査の不正に関し、11月14日、石井啓一・国土交通相の執務室で再発防止勧告書を受け取ったSUBARUの中村知美社長は、小刻みに何度も頭を下げた。国交省は10月、省令を改正し、完成検査の是正や検査を勧告できる制度を導入。SUBARUが初の適用例となった。

記者会見で謝罪するSUBARUの中村社長(左から2番目、写真:東洋経済/アフロ)
記者会見で謝罪するSUBARUの中村社長(左から2番目、写真:東洋経済/アフロ)

 SUBARUで無資格者が完成検査に関わっていた問題が発覚したのは昨年10月。当時の会見では、吉永泰之前社長(現会長)が無制限で記者からの質問を受け付けた。多くの謝罪のプロが「誠意ある対応で、謝罪のマニュアルに照らしても完璧な受け答えだった」と評価する。

 しかし、その後も燃費データの改ざんや、ブレーキの不適切検査などが次々に発覚。18年11月5日には、こうした不正が直近10月まで続いていたことも分かり、ブランドは大きく傷ついた。同社広報部は「販売を5%程度押し下げる影響が出ている」と見積もる。

 SUBARUは新たな不正が浮上する度に謝罪する「だらだら謝罪」に陥った。SUBARUとは対照的に、危機管理広報の専門家が「直ぐに沈静化に成功した」と指摘するのが日本ガイシだ。

 日本ガイシの18年5月の発表によると、送電線を絶縁しながら固定する器具「がいし」に関し、納品先との取り決め通りの検査をしていないなどの不正が、1990年代から始まっていた。出荷された製品は約1億個、金額ベースで1兆円規模になる可能性があるという。常習性は明らかで、規模も大きい。悪質性は高いが「各マスコミの報道もほぼこの一回で終わっている」(危機管理広報専門家)

 電通パブリックリレーションズ企業広報戦略研究所の黒田明彦部長は、謝罪会見においては謝罪表明、現状説明、対応状況、原因究明、責任表明、再発防止策の6項目が求められると説明する。黒田部長は「6項目すべて揃えば、1回会見をするだけで収束していく」と指摘する。