もう一つ特徴的なのは、現場の社員ではなく、幹部クラスの人が内部通報を行うケースです。これは自分の立場を考えて守るという意識もあるでしょうが、やはり現場が起こした問題を隠すのではなく、きちんと報告することが重要であるという認識が強いということも考えられます。全てが正義感からというわけではないにしても、内部通報がリポートラインの一つとして、機能するようになっているということだと思います。

内部通報に関して、特に寄せられることが多い内容にはどのようなものがるあるのでしょう。

山口:やっぱり今は、「ハラスメント」に関するものが非常に多いですね。パワハラ、マタニティーハラスメントなどが顕著です。私自身も話を聞いていて、判定には迷うことも多いですし、違和感を感じる内容がないではありません。ただ、働き方改革が大きな社会的テーマになる中で、コンプライアンスのことを考えるにあたって避けては通れない問題です。

 実際の現場においては、関連の制度を取り入れている企業も多く、当然のようにその制度を利用するべきではあります。ただ、管理職のみなさんは頭では分かっていても、腹落ちしているかというと別問題。自分がチームのリーダーで、奥さんと共働きの男性社員から、妻と半分ずつ育児休業を取りますと言われた時に、「君は将来があるんだから、考えたほうがいい」とか言ってしまうわけです。

 それは、労働法の専門の弁護士からすればアウトなわけですが、現場の人たちにとっては違和感は拭えない。それでも、その違和感をどのように受け入れて解消していくかということが、これから重要になっていくと思います。

まさに、新しい社会的テーマに、どのように向き合うのかということですね。その意味では、LGBT(性的少数者)に対する差別など、法律的な観点だけではなく、企業が考えなければならないテーマが出てきています。大手の弁護士事務所の役割も変わってきているという話もありますが。

「法令遵守=コンプライアンス」ではない

山口:おっしゃる通りです。どのような行動を起こせば、社会からどのように見られるかということを、企業はもっと真剣に考えなくてはならない。社内の常識と社外の常識には、ずれがあることをきちんと認識するべきです。メーカーであれば、安全性には問題がない、法令にも違反していない、だから大丈夫だということではないんですね。

 その意味で、「法令遵守=コンプライアンス」という時代であれば、我々弁護士の仕事はとても分かりやすかったんですね。これは法令違反じゃないという理屈をつけることで、企業を助けることはできた。もちろんこれも立派な役割ですし、法令違反かそうでないかが重要なことは今でも変わりません。

 しかし、たとえ法令に違反していなくても、社会的な見地から見て問題がある行動を企業が起こし続ければ、そのダメージがどれだけ大きくなるかという認識は、これからもさらに大切になっていくでしょう。LGBTなどはまさにその代表的なテーマだと思います。何をもって企業のコンプライアンスなのかということは、しっかり考えていく必要があります。

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