コーポレート・ガバナンスの観点では、社外取締役の導入も進められています。しっかりした外部の視点を取り入れることが重要だとされていますが、この点についてはいかがですか。

山口:基本的には、内部の人間だけで完全に不正の芽を摘み取ることは非常に難しい。社長は公表したがらなかったけど、外部の人間が直言したことで最終的に公表に至った事例はいくつも知っていますし、社外の目は間違いなく必要です。

 私が企業の経営者の方々に強く訴えたいのは、「残念ながら、御社でも不祥事は起きる」ということです。どれだけ平穏無事に事業をしてきた企業でも、いつか不祥事は起きる可能性がある。どのような不祥事が起きる可能性があるのか、また、実際に起きた時にどれだけ早くアラートが経営陣に伝わるのか。それをしっかりと考え、準備しておくことが必要です。

 組織というのは、いくら真面目な人が集まっていても、悪いと知りつつ不正が起きてしまうもの。さらにいえば、不祥事というのは1つの会社だけで完結するのではなく、取引先、最終消費者など様々なステークホルダー(利害関係者)に関わってくる。そのことを、経営者の方々は胸に刻んでほしいですね。

山口さんは内部通報制度の専門家でもいらっしゃいますが、制度の整備による変化は起きているのでしょうか。

山口:消費者庁から出されている民間事業者向けのガイドラインもあり、内部通報制度を活用する企業は確かに増えています。私自身も内部通報者の支援に取り組んでいますが、昔に比べて、内部通報が社員や従業員の方々にとって、身近なものになっています。また、単に制度が認知されてきたということだけでなく、内部通報そのものの性質も変わっています。

「共同通報」で監督官庁に告発

それは、どういうことなのですか。

山口:皆さん、内部通報というと、企業の大きな問題を知った責任感や精神力の強い社員が、たとえ孤立したり不利益を受けたりしても、自分の信念を曲げずに告発して戦うというイメージがないでしょうか?

ドラマなどでは、よく見られる光景ですよね。

山口:そうですよね(笑)。ただ実際には、今は社員がある程度の集団になって、みんなで「共同通報」に踏み切るというケースが増えています。問題自体は皆で共有しているし、悪いことだと分かっている。通報制度があることも知っている。だから、監督官庁に問題を告発する場合などにも、代表者の名前は一人でも、その後ろに社内の支援者が何人もいるという事例は多いんです。これは、制度自体の認知というだけでなく、活用の仕方が変わってきているということです。