「模擬記者会見」にショックを受ける経営者

 同社の顧客の中には、誰もが知る大手企業も少なくない。ただ、大手企業の経営者だからといって、謝罪記者会見に余裕を持って臨める人はほとんどいない。記者役のスタッフの容赦ない質問攻勢に晒されて、つい声を荒げたり、不快感を露わにしたりする人もいるという。

 こうした模擬記者会見の様子は全てビデオカメラで録画され、後で経営者に直接見てもらうようにしている。「思ってもいなかったような自分の姿にショックを受ける経営者は多いが、それが次回以降の改善につながる」と井口氏は話す。

 リスク管理の重要性が認識されるにつれ、PR会社が顧客企業と平常時から密にコミュニケーションを取ることも一般化してきている。プラップジャパンでは顧問契約を結ぶなどして、年間を通じてコンサルティングを手掛けるケースが増加。経営企画や広報、法務など関連部門と連携し、危機管理の体制構築やマニュアルの整備、さらにメディア・トレーニングや社員向けのセミナーなどを組み合わせ、いずれ訪れるかもしれない「その時」に備えている。

AIが謝罪会見を評価する試みも

 さらに、プラップジャパンでは今年1月から、東京大学と組み、記者会見の印象をAI(人工知能)で解析・数値化する研究を開始した。同大大学院情報理工学系研究科の山崎俊彦准教授の研究チームが進める、「印象」「魅力」などにまつわる研究内容と、プラップジャパンの知見を組みわせて、記者会見を定性・定量の両面から評価できるようにする試みだ。

 こうしたAIの活用も含め、謝罪にまつわるビジネスはその対象を広げ、新たな手法も開発されつつある。弁護士事務所も法律の枠を超えてその役割が拡大し、知見が蓄積されている。法律事務所とPR会社が連携し、大手企業をサポートする事例も増えてきている。

 ただ、それでも実際に不祥事に直面し、記者会見で矢面に立たされるのはあくまで当事者である企業、そして経営トップであることには変わりがない。そして、大半の経営者にとって、社会と向き合い、謝罪するというのは初めての経験だ。ボックスグローバルの野尻氏は「トップの覚悟と責任が最も重要であることは言うまでもない」と語る。謝罪ビジネスにまつわるソリューションをどのように生かすのかは、経営者自信の当事者意識に尽きるといえるだろう。