言い訳と責任転嫁のタカタ・高田社長

 最後まで自社の論理に固執したことで、経営破たんに追い込まれた企業もある。欠陥エアバッグの大量リコールによって窮地に追い込まれていたタカタは6月26日、民事再生法の適用を申請した。同社の末路は、対外コミュニケーションの失敗が一因になったといえる。

 タカタの高田重久会長兼社長による発言には、言い訳と責任転嫁が目立った。象徴的なのが次の発言だ。

 「残念ながら一部の報道によりですね、金融機関も待ったなしの状況に最終的になってしまった」

 6月16日、新聞各紙がタカタの民事再生法の適用申請が確定的になったことを一斉に報じたことに対する恨み節だったのだろう。だが、同社製エアバッグを原因とする死亡事故が起きてからも高田社長が記者会見になかなか姿を現さないなど、長年にわたって、被害者や社会に向き合う姿勢を見せてこなかった。そのことへの反省は聞かれなかった。

 タカタにも言い分はあるのだろう。自動車業界では、一般的に製品のリコールを実施するのは完成車メーカーで、部品メーカーではない。だが、それだからと言って、被害者や社会への責任を回避できるわけではない。

 タカタの社員は「法的リスクを恐れて余計な発信を控えようという空気があった」と証言する。「何度も記者会見を開くべきという意見が上がった。だが、トップに封殺されてきた」(同)。高田社長は公の場にほとんど出てこなかった理由を問われて、「多くの方から再建プロセスについて直接語るのは適切でない、外部専門委員会に任せて余計なノイズを発するな、という指摘がありました」と説明している。

 タカタの最後の記者会見は、法律事務所の会議室で実施された。会見後、何も知らされていなかったであろう、法律事務所のスタッフの女性が明るい声で「ありがとうございました」と陰鬱な表情の記者たちを送り出していた。

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