完成車検査の検査員は国の指針に基づいて認められた有資格者に限られる。日産の不祥事は、資格取得のための研修中の「補助検査員」に任せていたというものだが、それを説明する際に西川社長は“お国”という言葉を何度か口にした。聞きようによっては国の制度を揶揄しているようにも取られかねない。
「不祥事を起こした当事者の言葉としては軽さを感じさせる」と危機管理の専門家は指摘する。
結局、西川社長は会見の終了時も深いお辞儀をすることなく、足早に会場を去った。言葉では謝罪していても、一般の謝罪会見と比べると違和感はぬぐえなかった。
もっとも、謝罪ではなく「釈明」の姿勢を貫こうとしたのは日産の判断だったのかもしれない。この会見の映像を見た危機管理の専門家は「日産ほどの大企業が、日本の謝罪会見における儀礼を知らないはずがない。真意は分からないが、『これは謝罪ではない』と印象付けようとしたとしか思えない」と分析する。
安全性には問題がないと、最後まで強気の姿勢を崩さなかった日産。インターネットでは、テレビCMのキャッチコピー「やっちゃえNISSAN」に引っ掛けて、「やっちゃった日産」「やっちゃえの方向誤る」「法律軽視も、やっちゃえ!?」などと話題になったくらいだ。これも日産の戦略だったのだろうか。
記者の質問攻勢に不快感をあらわにした神戸製鋼・川崎社長
神戸製鋼の川崎博也会長兼社長も当初、謝罪会見での対応に危うい点があった。
10月13日、主力の鉄鋼事業で新たに品質データ改ざんがあったことを公表した際の会見。顔を紅潮させ、緊張した声で事案の経緯を説明したが、質疑応答では、「データ改ざんを隠蔽しようとしたのではないか」と厳しい追及が相次いだ。カメラのフラッシュがまぶしいのか、開始から40分ほど経過したころから、川崎社長はまばたきを繰り返し、顔には疲労の色がにじみ始めた。

「そんな説明では、国民は誰も理解しませんよ」「社長は責任をどう取るおつもりですか」――。責任や進退に関する質問が繰り返された際、川崎社長は一瞬ではあるが、目を閉じ、うんざりとした表情を見せたのだ。
謝罪会見で怒りや不満の表情など見せることは、批判をあおるリスクをはらむ。写真や映像に捉えられ、発言とは異なる場面でも繰り返し報じられる可能性があるからだ。
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