ビートたけしを批判できない堅苦しさ

西野氏:批判が拡散したんですけど、それってチャンスじゃないですか。だって、西野がゴーストライターを使って描いた絵がこちらと、この絵がぱっと出るから、よっしゃとなって。すぐに販売サイトを立ち上げて、ここで買えますとやったら超売れたんですよ。だから、それをやめてくれと思うか、みんなが注目してくれていると思うかの違いで、僕はおいしいと思った。だから批判コメントを片っ端からリツイートして、販売サイトのURLを貼り付けました(笑)。

 ネガティブな感情を持っている人が10人中9人いたとしても、1人ぐらいは欲しいなと思ってくれる人がいるかもしれない。じゃあ、広まれば広まるほど、いいんじゃないかと思って。誤解を解く作業なんかは別に後でやればいいし、とにかくまずはアンチのこの力を使った方が絶対いい。実際、その日だけで何百冊か売れたんです。

ネット上の意見を見ていて、ファンとアンチの比率はどれぐらいだと感じていますか。

西野氏:僕のことを大好きな人はいるのかな(笑)。ただ、アンチが絵本を買っているかどうかは分からないですけど、一番宣伝には付き合ってくれている感じがします。ファンよりも、アンチの方が熱心で、それが結果的に宣伝になっているという感じです。

 こういう手法が使えるのは絵本だからという面も大きいんですよ。小説の悪口は読んでなくてもできる。文章は切り取ることができるので、悪意ある編集が可能だけど、絵そのものは編集できない。絵本はそこがすごく強いですよね。批判にびくともしない。

ネットとの付き合い方はどうあるべきだと考えていますか。

西野氏:頭が悪いので、まず体当たりなんですよ。とにかくやっちゃえみたいな。気になることは1回やってみて、結果を見てから、あとは微調整ですね。帳じりを合わせていくという。SNSってこうやって付き合った方がいいんだなとか、クラウドファンディングってこういうことなんだなとか、徐々に見えてくる。やる前はちょっと分からないですね、僕は。

では、今のテレビに欠けている要素は何だと思いますか。魅力が薄れた理由というか。

西野氏:何だろう、テレビに足りない部分ですか。でも、むっちゃ面白いんですよ。やっぱりすごく優秀な人ばっかり集まっているし。

 まず、スマホで見るということじゃないですか。スマホでとなったときに、いまだに登場人物が多いテレビがあるし、画面面積に合ってない。あと、表面的なテクニックに走っちゃった面も大きいと思います。面白くて、クオリティーも超高いけど、どきどきしないみたいな。

 例えば、今のテレビはビートたけしさんを批判したらダメな空気になっています。ビートたけしさんを倒すという芸人がいたら、みんなで袋だたきにする雰囲気になっていますよね。タレントもテレビ局のスタッフもそうなっている。上の世代が用意したゲームの中で、ルールを守ってこのゲームを上手にできる人を引き上げましょうとなっていて。アホみたいな言葉で着地して申し訳ないんですけど、ちっともどきどき、ハラハラしない。

テレビが、現実とはまったく異なる世界を見せてくれることが少なくなったということでしょうか。

西野氏:そうですよね。テレビは本来、現実社会の「駆け込み寺」みたいだったわけです。サラリーマンとして働く中でこれはどうなんだと思うところがあっても、テレビの世界に逃げ込んだら、そこで楽しいことが行われている。テレビはそういう存在だったはずなのに、自分が現実社会で抱えているストレスと似たような感じになっていて、見ていてもうーんと思ってしまう。

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