吉本興業は批判を聞くような会社じゃない

「批判は儲けもん」という考えは昔から持っていたのでしょうか。

西野氏:試行錯誤の中で自然と身につきました。デビュー直後に全国放送の『はねるのトびら』(フジテレビ系列)にメーンで抜擢されて、当時からクレームみたいなのがいっぱいあったんですよ。嫉妬や批判みたいなのをすごく浴びて。

 1年目でもう世に出たので、批判を浴びなかった時期がないぐらい。だから基本的に批判は浴びるものという前提でスタートしています。僕は今、芸歴16年ですけど、すべてが追い風という状況は1度もありません。必ず何か向かい風があって、その中でどうやってやろうかと悩む中で、「ああそうか、体の振り方で何とでもなるな」と思い至りました。それはヨットを操作する要領と同じなんです。

西野氏:ヨットの話で言うと、帆の傾け具合を調整して前に進む力は5~10年前よりは強くなっていると思います。ただ、自分がヨットで、帆の傾け具合でどうにでもなるという感覚を持ってないと、向かい風は向かい風でしかない。息苦しいと思っちゃうし、なるべく無風の方がいいと思っちゃうかもしれないでしょう。でもよく考えてみたら、誰も関心を示さないという、無風状態が一番ヤバいですよ。

「無風が一番ヤバい」と話す西野氏
「無風が一番ヤバい」と話す西野氏

組織に属していると、なかなか自分の意見を主張するのが難しい面もあります。

西野氏:確かに個だからできる部分が大きいと思います。僕は幻冬舎や吉本興業、テレビ局にもお世話になっていますけど、基本的に個だから。どこかすごく大きな組織に属していたら、クレームがそっちに行っちゃう。それでなかなか体が振りにくい部分もあるんだろうなとは感じますね。

クレームが吉本興業に向かうことはないのでしょうか。

西野氏:多少はあると思うんですけど、吉本はそんな丁寧に批判を聞くような会社じゃないし(笑)。

今年は個人が炎上し、謝罪に追い込まれるケースが多くありました。その際の対応が杓子定規というか、表面的に取り繕っただけのものが目立ちました。もっと自由に正直なメッセージを発信すれば、炎上を抑えることができたのにとも感じたのですが。

西野氏:個人の資質の問題もあるとは思いますが、それ以上にメディアが大きく取り上げるようになったからでしょうね。昔から「許せない」と批判する人は一定数いたんですけど、ネットの炎上が起きたら、テレビがご丁寧にそれを取り上げて、「こうやったら人を不幸にできるんだよ」とか、「こうやったら人の仕事を奪うことができるんだよ」「こうやったらスポンサーにダメージを与えることができるんだよ」ということを教えちゃうからでしょうね。結果的にテレビが自分で自分の首を絞めることになっちゃっている。

SNS(交流サイト)の浸透によって、ネガティブな意見が広がりやすくなった面もあります。

西野氏:もうヨットの話を小学生から教えた方がいいんじゃないですか。ヨットみたいに向かい風を追い風に変えればいいんだよといって。

どうすれば向かい風を追い風に変えることができるのでしょうか。

西野氏:『えんとつ町のプペル』の制作過程で面白いことが起こりました。今回は複数のイラストレーターによる分業制で制作することを決め、イラストレーターのギャラを支払うためにクラウドファンディングを活用しました。ある時、ネット上で「西野の新作はゴーストライターを雇って作らせているらしい」という話がわーっと盛り上がったんですよ。あいつは何もやっていない、最低だみたいな。

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