炎上に書き込むのは0.5%

なぜ、大手メディアが大々的に炎上問題を報道するようになっているのでしょう。

山口:1つには、マスメディアの焦りがあるのではないでしょうか。私はよく「一億総発信時代」と表現するのですが、今は誰でも情報をものすごく早く発信できる時代です。趣味や情報の多様化もあり、メディアが増える中で、相対的にマスメディアの立場が弱くなっている。一方、情報の速さで勝負しようとするときに、ネット上の情報を安易に利用してしまったり、デマ写真を間違って使ってしまったりという状況が発生してしまっています。

 そうした意味では、炎上が実態以上に膨れ上がって被害が拡大してしまう大きな要因が、マスメディアにあるとも言えるわけです。1つはそもそも炎上問題を取り上げすぎること、さらに大げさに報道することで加担してしまっている。

 少し話が前後しますが、炎上のメカニズムにおいて、実は熱心に書き込みをしている人たちというのはものすごく少ないんです。

興味深いですね。どういうことですか。

山口:私の実証研究の結果なのですが、具体的には1年以内に炎上に絡んで書き込みをした人の数は、ネットユーザー全体の約0.5%、約200人に1人しかいません。

 これは業界的には有名な話で、例えば2ちゃんねるを始めた西村博之氏も過去に「2ちゃんねるの炎上の主犯はほとんど5人以下」という趣旨の発言をしています。ネットやスマホの普及によってその絶対数はもちろん増えてはいるのですが、元々はかなり少ない人達が起こしている現象なのです。

 加えて、ネット上の意見はテレビや新聞が行なっている世論調査などよりも極めて能動的と言えます。聞かれたから答えるのではなく、自分から意見を発信する、つまり強い思いを持っている人がたくさん意見を発信することで「ネット世論」と呼ばれるものが出来上がっていく。

 ただ、その0.5%の人の意見は、社会全体の意見の分布とは異なる可能性も高いわけですね。にも関わらずマスメディアがそれに乗っかる形で過激なバッシングをすることで、炎上がより大きくなってしまうという状況があると考えています。

なるほど。炎上と一口に言っても、その事案が実際にどのようなものであるのか冷静に見極める必要があるということですね。

山口:一方で、炎上には良い影響がある面もあります。強者である企業の不正行為や、社会的規範に反したような行為に対して、弱い立場である消費者が訴えやすくなったということです。

 今年はPCデポが認知症の高齢者に対して高額の契約を結んでいたことが問題視されましたが、過去に「スカスカおせち」で批判を受けたグルーポン・ジャパンの事例などもそうですね。購入者が写真付きでひどいものが届けられたと投稿することで、結果的にはサービスの是正につながりました。