希望的観測が招いたブランド失墜

 事態が急速に動いたのは11月28日。ニュースサイトのBuzzFeed(バズフィード)が「参考サイトの文章を、事実や必要な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」などを含んだ「マニュアル」が存在したと報道した。他人の著作物からの剽窃を、外部のライターに対して組織的に奨励しているととれる重大な内容だ。

 DeNAではWELQだけではなく「iemo」や「Find Travel」など合計9サイトを同じ事業部で運営していた。当然、WELQ以外のサイトにもリスクがあることは想定できたはずだが、翌29日に同社が発表した内容は、薬機法に抵触する恐れがあるWELQの非公開化に留まった。他のサイトについては守安社長が委員長となる「キュレーション管理委員会」を設置して調べるとした。

 そこから先は、坂道を転げ落ちるだけ。他の8サイトでも同様の運営状況であったことが判明し、12月1日に計9サイトの記事の非公開化と守安社長の報酬返上を発表する。

 2016年3月期まで3期連続減益に沈む中で、成長の期待をかける事業が不祥事でほぼ壊滅状態に。組織ぐるみで、著作物の剽窃を促していた可能性すら出てきている。経営トップの進退が問われる事態にも関わらず、この段階では記者会見について「予定はない」(広報担当者)としていた。

 状況認識の甘さは、原因の調査や再発防止策の中途半端さにも表れている。上場企業で重大な不祥事があった場合には、利害関係のない専門家からなる「第三者委員会」を設置し、問題の原因や事実関係を徹底的に調査し、再発防止策を提言してもらうことが常識となっている。

 それにも関わらずDeNAは当初、社内の「キュレーション管理委員会」で記事作成のプロセス及び中身の精査を行うとの姿勢を崩さなかった。「守安社長も利害関係者であり、社会の信頼が得られないのでは。第三者は入れないのか」との記者からの質問に、「検討したい」(広報担当者)との答えが返ってくるのみだった。

黙って存続サイトの記事8割を削除

 12月1日の段階ではDeNAは「運営体制に問題がない」として「MERY」という1サイトのみは継続した。ところが、その発表から間をおかず、MERYでも大量の記事の非公開化を進めていたことが判明。この事実を知った取締役会が「他のキュレーションプラットフォームサービスと同様に一度サービスを停止し、厳正かつ公正な調査を受けるべき」と指摘した。7日の会見では、ようやく「少しでも問題がありそうな記事は、機械的に一時非公開処理を行っていた」と釈明したが、状況を考えれば重大な疑念を持たれても仕方のない行動だ。

 DeNAは12月5日、MERYの記事非公開化と第三者委員会の設置を発表。そして、7日にようやく経営トップが公の場に姿を表し謝罪した。3時間に及ぶ会見でも不信感は拭えず、社長の進退や、組織的な剽窃への関与、事業責任者が出席しない理由などへの質問が相次いだ。

 ここに至るまでにDeNAが失地回復を図る機会は、何度もあった。

 最初のチャンスは、WELQの記事への批判が高まったときだ。そもそも同事業はベンチャー企業を買収して発足した経緯がある。その際DeNAの経営陣は、著作権管理についてリスクがあると認識していたという。

 WELQの炎上そのものは、明らかに問題がある医療情報を提供することへの反応だったかもしれない。だが、上記経緯を考えれば、低品質の記事が量産されていることを把握した時点で、記事生成プロセスをチェックするという思考回路を経営陣が働かせることはできたはず。そうすれば、不適切な運営体制も自ら発見し改めることができた可能性は高い。

 もう一つのチャンスが、マニュアルの存在が報道されたときだ。危機管理の鉄則は、影響が拡大する可能性を食い止めること。現場で何が起きているかを把握できていないことを自覚していたにも関わらず、希望的観測に基づいてWELQ以外のサイトで記事の公開を継続したのは明らかな判断ミスだった。不祥事の最中に、収益を最優先しているとの印象を与えることになる。

 そうした一連の対応が、DeNAには自浄能力がないのではとの疑念を抱かせ、社内外から情報が一気に噴出する事態につながった。今後の信頼回復は、第三者委員会が本当に機能するかにかかっている。

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