提供:三菱自動車工業
2017年に新たなブランド・メッセージを表明し、4年ぶりの新型車となる『エクリプス クロス』を発売。しかも、そのクルマがRJCカーオブザイヤーを受賞するなど、ここのところ何かと話題に上る三菱自動車。同社の開発部門を立て直すために、2016年に副社長に就任した山下光彦氏に、この2年半取り組んできた改革の現状と、今後の商品開発について聞いた。

4年ぶり新型車『エクリプス クロス』がRJCカーオブザイヤーを受賞
三菱自動車にとって4年ぶりの新型車となる『エクリプス クロス』が、2019年次のRJCカーオブザイヤーを受賞した。各社がいま最も力を入れており、なおかつ激戦区であるクロスオーバーSUVのジャンルで受賞したことに加え、時代の先端をいくガソリンエンジン「ダウンサイジングターボ」が評価された。
「このクルマには4輪駆動でキビキビした走りを実現するという、三菱自動車の伝統が生きています。久々の新車なこともありますが、こうしたわれわれの価値を認めていただいたのは大変うれしいですね。今後の新車開発にも弾みがつきそうです」と話すのは、同社副社長の山下光彦氏だ。
2016年6月に、三菱自動車の開発部門を立て直すために日産自動車から派遣された山下氏は着任時より、組織のあり方から個人の働き方まで、さまざまなレベルにおいて改革を推し進めてきた。RJCカーオブザイヤーを受賞した『エクリプス クロス』は、図らずも開発部門の変革が進んでいることを象徴する存在となったわけだ。
「日本国内ではまだ発売されていませんが、次世代クロスオーバーMPV『エクスパンダー』という7人乗りミニバンが予想以上の売れ行きで、有望な市場であるインドネシアではシェアが30%を超え、同国のカーオブザイヤーをはじめ9つの賞を受賞しました。これも現地の市場に適応したクルマづくりができた一つの結果だと思います」

1979年に京都大学大学院航空工学修士課程修了後、日産自動車入社。同社副社長などを経て、2016年6月、三菱自動車副社長執行役員就任
1年以上かけて練ったブランド・メッセージに込めた想い
社内改革を進めるにあたって山下氏が掲げたポイントは、「①組織のあり方」「②仕事を進める仕組み」「③働く人たちの文化」の3つだった。
「①の組織については、すでに会社のサイズ感に合ったものに変えたので、ほぼ完了しました。②は開発関連のプロセスが非常に多いため、新車開発のプロセスなど大どころから新たなプロセスづくりを進めています。③については、長年この会社で働いてきた人たちの価値観を大事にしながら、そこはちょっと違うのではと感じる部分を改めているところです。もちろん、何千人という人間がいるので、事はそう簡単ではありませんが、だいぶ浸透してきたという実感があります」
「改革はまだ道半ばであり、ここまでの自己評価は50点」と本人は謙遜するが、着実に社内改革が進んでいる事実は、様々なところから読み取ることができる。その一つが新たなブランド・メッセージの策定だ。
2017年10月に発表された“Drive your Ambition”という三菱自動車の新たなブランド・メッセージは、本社の企業ブランド構築の責任者でもあった山下氏が中心となって、1年以上の時間をかけて練り上げたものだ。
「重視したのは、三菱自動車が過去から受け継いできた伝統とは何なのかをもう一度紡ぎ出し、それを大事にしようということでした。とはいえ、クルマづくりが100年に一度の大きな変革期を迎えていると言われる今、それだけで生き残っていくことはできません。伝統に“新しい価値の創造”をプラスしていくことが、これからは非常に重要になってきます」
今後の技術開発を進めていくうえで、ブランド・メッセージについての社内の共通理解を深めるために作成されたのが、3層から成るブランド・ピラミッドである(下図)。これは下段が「機能的価値」、中段が「情緒的価値」、そして上段が「ブランド・エッセンス」を表している。

機能的価値とは「三菱自動車のクルマにはこういった価値が付いている」ということを表すもので、要素としては同社の強みであるSUVとEV、そしてAIやコネクテッド技術といったシステムとの組み合わせによって生み出される新しい価値などが含まれる。
情緒的価値とは、三菱自動車が過去から受け継いだ良さである「Adventurous(冒険心に富んだ)」に、「Progressive(進歩的なアプローチ)」の考え方を加えたもので、ユーザーに同社への共感を感じてもらうためのキーワードになっている。そして、これらの価値をわかりやすく表したのが、「Ambition to Explore(志をもって探求していく)」というブランド・エッセンスだ。
「会社全体でこうした考え方を共有し、個別の価値をさらに磨き上げることができれば、お客様にとって必ずや魅力ある技術、魅力あるクルマを生み出すことができると思います」と、山下氏はそこに込めた想いを語る。
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