「中国ユニコーン」の創業者も海亀族

 アリババ集団が出資する顔認証技術のスタートアップ、北京曠視科技(メグビー)の創業者、印奇氏は今、中国でもっとも注目を浴びる「海亀族」の1人かもしれない。1988年生まれの印氏は中国の名門、清華大学を卒業後、米コロンビア大学で顔認証技術の開発で成果を挙げたことで知られる。清華大学時代に知り合った2人の「学友」と共に2011年にメグビーを設立。印氏が持つ技術をベースに顔認証技術の精度を高め、メグビーを中国のユニコーン(非上場ながら10億ドル以上の企業価値を持つ企業)に育て上げた。

印奇氏は李克強首相に対する「ご意見番」の役割も果たしている(写真:Imaginechina/アフロ)
印奇氏は李克強首相に対する「ご意見番」の役割も果たしている(写真:Imaginechina/アフロ)

 共産党員でもある印氏は、李克強首相主催の会議に呼ばれ、AIの動向について解説したこともある。今年30歳と年齢は若いながらも、ハイテク産業を重視する党に対する「ご意見番」のような存在だ。

 共産党が印氏のような人材を積極的に育成している点も見逃せない。あらかじめ選抜した優秀な人材を海外に送り込む「千人計画」と呼ぶプロジェクトがそれだ。2008年に立ち上げ、ハイテクなど国が重点分野と定める分野の人材を世界の最先端の研究の場に身を置かせることで自国の産業発展に役立ててきた。対象者には党が資金を支援するなど手厚く優遇しており、トランプ政権も問題視しているとされる。

 グローバル経済の下で、有能な人材を介して中国に流れ込む新技術の種。中国の特許出願数も急増し、自前の開発力にも磨きをかける。半導体やAIなどでは、世界トップレベルの水準を誇る技術領域も出てきている。技術覇権に向けて着々と手を打つ中国。トランプ政権が焦りを強めるのは、こうした事情もある。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。