デジタルデバイドのないネット社会を地球規模で実現

 次は、少し話が大きくなるが、変革期にある世界の一市民としての「使命感」だ。

 現在の世界は、自らの経済圏を貪欲に拡大しようとする帝国主義国家同士が、互いに衝突を繰り返してきた第二次世界大戦以前の世界に比べれば、随分良くなったとはいうものの、なおも各地で無意味な戦争や騒乱が後を絶たない。

 世界中で民主主義と法治主義に根ざした国家が増えたとはいうものの、現状を注意深く見渡すと、自己本位な大衆とそれに迎合する政治家たちが、むしろ時代を昔に戻す方向に動かしつつある様な気もする。

 この問題を克服しようとするなら、何よりも世界中の若者たちに均等な教育機会を与える必要がある。そして、世界中をくまなくカバーするオープンな情報システムによって、正確な事実関係とそれに基づく多くの公正な論評が、世界中の人たちに同時に共有される様にすることが必要だ。そうすれば、多くの人たちが「真実に基づいて自分の頭で考える」ことができる様になり、一握りの人たちの扇動に乗せられる可能性も少なくなるだろう。

 これを実現するために大きな力になり得るのがインターネットだが、その恩恵を全世界の人々にもたらすには、未だにあまりに未成熟で、かつ非力だと言わざるを得ない。ネット上にあふれる情報や言論は、文字通り玉石混交であり、現状のままだと、多くの人たちを啓蒙するどころか、むしろ混乱させる恐れもないとは言えない。

 その一方で、インターネットの恩恵を万人に行き渡らせるために必要な「高速通信ネットワーク」のお寒い現状も、大きな問題だと私は思っている。現状が改善されないと、通信環境の格差が情報力の優劣をもたらす「デジタルデバイド」という現象を引き起こし、世界中でより一層深刻な格差拡大を招くことにもなりかねない。

 これからの多くの問題に風穴を開けることができるのは、一にも二にも「技術革新」だ。そして、私の様な人間は、その核心に迫れる立場にある。それなのに、自ら早々と現場から離脱して、「悠々自適」などという贅沢な環境に身を置く選択肢は、現在の私にはあり得ない様な気がする。