スマホの普及を受けて、企業内の少人数チームや個人起業家同士などの業務効率化を目指して提供されるクラウドサービスが増えている。そうした話題のクラウドサービスは本当に仕事の効率化につながるのか? 使ってみて分かった便利な使い方を交えて、クラウドサービスの使いこなしノウハウを紹介する。
仕事をきちんとこなす基本のひとつが、メモである。何事においてもメモを取ること、覚え書きを書いておく、アイデアを書き残しておくことが大切だ。
そうしたメモは、近くにある紙切れやメモ用紙、ノートなどに手書きで残すことがほとんどだろう。スマートフォン(以下「スマホ」と略)やパソコンにテキストを打つ方法もあるが、端末を取り出してアプリを起動し文字を打つのは手間がかかるし、素早い文字の入力スキルが必要になるため、相当な達人でない限り難しそうだ。
作成したメモをいつでもどこでも閲覧、編集したい!
しかし、便利な紙のメモにも不便な面がある。例えば電話で受けた用件をポストイットにメモして、デスクまわりに貼り付けておいたとする。すると、出先でメモを見たい用事ができたときは、オフィスに電話して誰かに読み上げてもらう必要がある。また、「どこかにメモしたはず」と思っても、所在が分からなくなることもある。ほかにも、自宅で夜に仕事の資料を作ろうとして、会議の記録を見たいと思ったら、会議の内容を記したノートを仕事場に置き忘れていた…という場合もある。
やはり、メモやノートの内容をいつでもどこでもサッと活用するために、パソコンやスマホでメモを管理できたらな…と思っていた。
短いメモだけでなく、メールの下書き、日報を書くための覚え書き、書きかけの企画書・報告書などあらゆるテキストをスマホやパソコンで作成して、出先の待ち時間などにスマホからも手を入れられたら、物忘れも防げるうえに、仕事も効率化できそうだ。
いつでもどこでもメモを記録して探せる「Simplenote」
「Simplenote」のサービス紹介サイト。パソコン向けアプリとWebブラウザーは操作メニューが英語表記だが、スマホ用アプリは日本語化されている。
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そんな用途には「Evernote」というサービスが良く知られているが、実際に使ってみると、機能が多く使い勝手が複雑なのと、無料では制限事項が多くて使いづらい。そんなときに見つけたのが、「Simplenote」という無料のクラウドサービスだ。その名の通りシンプルな使い勝手が気に入り、筆者も愛用を続けている。
Simplenoteは、「簡単にメモやリスト、アイデアなどを書き留められるツールです」と説明にあるように、テキストを入力して管理するためのシンプルなクラウドサービスだ。スマホ・タブレット用(iOS、Android)、パソコン用(Windows、Mac)のアプリが提供されており、いつでもどこでも、これらのIT機器を使ってメモを参照、作成できる。
最も使いやすいのは、日本語化されているスマホ・タブレット用のアプリだ。また、メニューなどは英語になるが(メモはもちろん日本語可)、Webブラウザーからも使えるので、パソコン、スマホ、タブレットなど、あらゆる端末から緊急時に使える点も便利だ。
走り書きのメモでもすぐに保存されるので、忙しい時でも手軽に使える。加えて、多くのメモの中から必要なものを探し出すための検索機能や、グループのメンバーとメモを共同編集したり、やり取りしたりする機能が充実しており、なかなかあなどれない。次ページからは、最も高機能なAndroid用アプリを主に取り上げて、サービスの便利なポイントを紹介していこう。
Simplenoteのイチオシ・ポイント
・アプリが主要機器のOSに対応しているうえ、Webブラウザーからでも使える。このため、いつでもどこでも使いやすい
・シンプルで直感的な操作で誰にでも簡単に使える、タイトル付けや保存作業も不要で、メモやノートの作成に集中できる
・必要なメモをすぐに探し出せる機能が充実している
・グループでメモの内容を詰めるための共有機能がある
・長い文章を推敲したい場合は、メモの履歴参照機能がスグレモノ
いつでもどこでも素早くメモできる
Playストア(iOSではApp Store)といったアプリの配信サービスから、Simplenoteをダウンロード。アイコンをタップすると、「ノート一覧」(メモのタイトル一覧)が表示される。リストには「Simplenoteへようこそ!」というサンプルが用意されているが、今後は自分が作成したメモの一覧が表示される。
ノート一覧が表示される。サンプルのメモをタップしてみよう。
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メモのタイトルをタップすると、「ノート画面」が現れ、内容を参照、入力、編集できる。左上の「←」(iOS版では「メモ」)をタップすると、ノート一覧に戻る。
ノートを参照したら、左上の←をタップして一覧に戻る。
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なお、iOSアプリは、起動後すぐに登録とログインを必要とする仕様になっているので、登録とログイン作業のあとこれらの基本操作を行おう。
ではさっそくメモを作成してみよう。右下にあるメモに「+」のアイコン(iOS版では右上の「+」アイコン)をタップ。するとメモの入力画面が表示される。
一覧画面で「+」アイコンをタップ。
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入力したメモは、1行目がタイトル、2行目がプレビューとして「ノート一覧」に自動的に表示される。わざわざタイトルを付け、保存の操作を行う必要はない。急いでいる時はササッと文字を入力するだけでも、しっかり保存されているのだ。
タイトルの下に1行空白を入れてもプレビューは表示されるので、見やすくするために1行空けておくのがおすすめだ。
「Simplenote」では、スマホなどで保存したメモは、すべてサービスが用意するサーバー(クラウド環境)に保存される。この仕組みによって、自分が持つ複数の端末から保存したメモにアクセスできる。ただし、この機能を使うには、Simplenoteにユーザー登録する必要がある。
見つけたいメモを素早く「探す」!
Simplenoteを使っていると、メモがすぐに増えてしまい、目的のメモがすぐに見つからない、という事態に陥る。そうした場合は、メモを見つけやすくする整理機能を使ってみよう。
・重要なノートは「上部に固定」
筆者がよく使うのは「上部に固定」機能。重要なメモを設定しておくと、ノート一覧の上に固定されるので、画面をスクロールすることなく見つけられる。設定は簡単だ。上部に固定したいメモを開き、ノート画面の「i」アイコンをタップ、「上部に固定」をオンにする。
「i」アイコンをクリック、「上部に固定」スライダーを右にスライドしてオンに。
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ノート一覧に戻ってみよう。「上部に固定」したノートは一覧の上に固定され、丸印が付いているのが分かる。
よく使うノートや検討中のノートは上部に固定しておくとすぐに開けて便利。
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・ノートにタグを付けて整理
それぞれのメモにタグ(検索用キーワード)を付けておくと、メニューからタグ別にメモを表示できる。タグを入力する手間はかかるが、ジャンル別や用途別などの整理に便利だ。
タグは、ノート画面下にある「タグを追加」欄(iOSでは「タグ」欄)に入力する。なお、一部の文字を入力すると、過去に入力したタグの選択肢が現れて選べるようになる。
ノートにタグを入力する。
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タグは、左上の三本線アイコン(iOSでは三角アイコン)をタップすると、メニューの「タグ」に一覧が表示され、選ぶとそのタグを付けたノートが一覧で表示される。すべてのノート一覧に戻すには、一番上の「ノート一覧」(iOSでは「すべてのノート」)をタップする。
タグはメニューに表示されるので、ジャンルや用途別に表示できて便利。タグの編集は「編集」のタップで行える。
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・ノートを検索
保存されたメモの全文検索によって、メモを探すこともできる。ノート一覧画面の右上にある虫眼鏡のアイコンをタップすると検索窓が現れ、キーワードを入力することで、ノートの全文検索が行える。iOS版では、ノート一覧画面の上にある検索窓を使う。
検索すると、キーワードに該当するメモがノート一覧に表示される。
ノートの全文検索機能がスグレモノ。あらゆる機会に意外と役立つ。
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なお、ノート一覧は初期設定では編集日の新しい順に並ぶが、アルファベット順などへの変更も可能だ。「要約版ノート一覧」の機能をオンにすると、ノート一覧がタイトルのみになり、画面に多くの項目を表示することができる。
グループ内でメモを「共有」
ビジネスでは、少人数のチームで文書を共有したり、編集したりするシーンも少なくない。Simplenoteには、そのための機能もしっかり備わっている。筆者も、アイデアや企画を複数のメンバーで考える際に、共同編集機能をよく使う。
共有関連機能の操作は以下の通りだ。まず、共有したいノートを開き、箱から矢印が出ている絵の共有アイコンをタップ。すると下からメニューが現れるので、メモ共有の手段を選択する。
Android版の共有メニュー。
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例えば、メモの内容をメールで送るには、「メール」をタップ。あらかじめ内容が入力されたメール送信画面が開くので、メモを貼付することなく、すぐにメールで送れて便利だ。そのほか、ほかのアプリに内容をコピペしたいときは「クリップボードにコピー」を選ぶ。
iOSは先述の「i」アイコンのメニューから「公開」「共同編集」「送信」が可能。「送信」を押すとiOSの送信メニューが開き、さまざまな送信手段を選ぶことができる。
iOS版では「送信」からiOSの送信メニューを開くことができる。
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続いて共同編集の使い方を紹介しよう。メニューから「共同編集」をタップし、共同編集したいSimplenoteユーザーのメールアドレスをタグ欄に入力する。すると、相手のSimplenoteにも同じメモが加わり、編集内容が全員のメモに反映される。
メニューで「公開」をタップすると、メモの内容を記したWebページのURLが生成される。URLはクリップボードにコピーされるので、メールやメッセージ、SNSの投稿欄などに貼り付けて伝えよう。共同メンバーに内容をさらっと伝えたい場合や、Simplenoteのユーザー以外にも伝えたい場合に便利だ。
URLはノートの「i」アイコンの「公開リンク」にも記されていて、右のアイコンからいつでもコピーできる。公開の中断は、共有メニューの「公開リンクを削除」をタップする。
公開したノートのリンクは、「i」メニューからいつでも参照、コピーできる。iOS版でも同様だ。
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長文編集で便利な履歴記憶機能
筆者は、コラムなど文章の書き出しを、Simplenoteで試行錯誤して書くことが多い。その際、前の表現に戻したいと思ったり、削ってしまったフレーズを復活させたいと思うなど、少し前の段階に戻したいことがある。そんなとき、Simplenoteの履歴機能が役に立つ。
メモの画面上にある時計のアイコンをタップ、下に現れたスライダーを左右にスライドすると、メモの内容が時系列で変化し(スライダー上に日付と時間が表示される)、作成/編集の履歴がたどれる。タイミングを選んで「復元」を押すと、そのときの状態に復元できる。
時計アイコンをクリックし、スライダーでノートの履歴をたどる。この場合はリストに過去何があったか履歴で振り返っている。
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・PINコードを設定して情報を守る
つい置き忘れたりしがちなスマホだが、大切なメモを他人に見られないようにするには、PINコードを設定しておくとよい。「設定」画面の「PINロック」から「PINロック有効化」をタップ、PINコード(4桁の数字)を設定する。
「PINロック有効化」でアプリにロックを掛け、セキュリティ強化を図ろう。
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iOS版では、「設定」画面の「セキュリティ」の「パスコード」をタップして、4桁のパスコードを設定する。「Touch ID」をオンにすると、端末の指紋認証機能も利用できる。
次回からアプリの起動時に設定したコードを入力すると、ノート一覧が表示され、アプリを使用できる。
PINコードを設定してSimplenoteで保存したメモの情報を守ろう。
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Simplenoteは忘れたくないことや覚えておきたいこと、ToDoや買い物リストなどの簡易なテキストから、メール、企画書、各種書類の下書きなど、いつでもどこでも思いついたときに手持ちの端末から使える。扱えるのがテキストのみなのが割り切りがよく、操作も直感的で分かりやすい。特にアイデア、下書きなどの草稿を詰める作業に向く、というのが筆者が常々感じているメリットだ。仕事にプライベートに大いに活用しよう。
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