日経ビジネス12月5日号では、特集「おのれ!間接部門」を掲載した。「間接部門が仕事の“邪魔”をする」。そんな不満を持つ直接部門の社員が増えているからだ。実情に合わないルールを導入する一方で、形骸化した古い仕組みは固守しようとする。特集内では間接部門と直接部門の対立を取り上げ、解決策を模索した。間接部門の中でも、特に業務の内容が“見えづらい”のが総務部だ。あるプロは、「日本の総務部は欧米企業と比べて40年遅れている」と指摘する。だが同時に「総務が生まれ変われば、日本の企業は蘇る」とも語った。日本国内でプロの総務を育成しようとしている、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのクレイグ・カックス副代表理事に話を聞いた。

世界の総務部のあり方に詳しい一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのクレイグ・カックス副代表理事

世界の総務部を見て、日本の総務部や間接部門全体をどのように評価していますか。

カックス氏(以下、カックス):今の日本のような総務部は、決して珍しいものではありません。というのも、30~40年前は世界中の総務部が同じような存在だったからです。

 私が富士通の米国支社で働き始めた1980年代、自分から望んで総務部に配属される社員はほとんどいませんでした。当時の総務は、「会社から期待されていない裏方部門」だったんです。私自身、たまたま英語と日本語が話せたので総務部に配属されました。

 ただ、私が総務に配属された頃から、アメリカではプロの総務を育てようとする動きが出てきました。総務部門の業界団体なども登場し始めた。

 世界の総務と日本の総務で何が違うか。最も大きい点は、欧米企業では総務部というのは、バックオフィスの専門職であるということです。間接部門とひと括りにするけれど、その中には経理や人事、システム、法務など多様な仕事があります。そして、その多くが特殊な知識が必要になる専門職です。一方で、こうした専門職の定義に収まりきらない仕事をすべて引き受けるのが総務の仕事です。言い換えれば、私たち総務のプロというのは、会社の業務の中でも「残りものの仕事のプロ」と表現できるでしょう。

 社員食堂から造園、社有車、清掃、受付…、ありとあらゆる雑多な仕事を引き受けて成果を出すのが「総務のプロ」です。

つまり総務にも専門的な知識が必要である、と。

カックス:もちろんアメリカでも30~40年前はそんな意識はありませんでした。しかし、現代は全く異なります。

 実際、総務部門が1年の間に使うコストは、人件費を扱う人事部に続いて、2番目に多い。日本企業で気づいている人はあまりいませんが、普通の企業でも、総務部は年間、何億円というコストを使っています。オフィス賃料や固定資産税、保全費やメンテナンスコスト、光熱費といったハード面に関する費用の管理。ソフト面でも、社内の職場環境や清掃、受付、警備、休憩室の維持費など、実はすごくお金を使っている部門なのです。

 それにも関わらず、日本の総務担当者に、「あなたの部門は年間、どれだけのお金を使っていますか」と聞いても、答えられないケースが多い。社有車など実際のコストは事業部が負担するケースもある。けれど社用車の手配などをするのは総務部でしょう。それなのに、ほとんどの会社が数字さえ管理できていない状況です。私は、総務が扱うお金を「総務財布」と呼んでいますが、「おたくの総務財布はいくらですか」と聞いても、皆さん「知らない」と言います。

 ポイントは、社有車1つとっても、それを管理するには実はノウハウが求められるということです。アメリカでは、社有車を効率的に管理するプロがいるくらいですから。社有車全体にかかるコストをどのようにマネジメントするのか。日本企業にはプロがいませんから、ほとんどのケースでは、総務部や担当する事業部などが、外部に丸投げしているだけです。だから社有車だけを見ても、会社全体で年間にいくらのコストが発生しているのか分からない。ムダ遣いをしているのかどうかさえ把握できない。