間接部門の顧客は直接部門

先ほど例に上げた京都の機械メーカーのように、間接部門にも業績にコミットさせるというのは1つの解決策だと感じます。ほかにどんな方法があるのでしょうか。

太田:間接部門の業務を「見える化」するのも1つの手でしょう。例えばある会社では、社内のイントラネットを上手く活用しています。総務部の社員が福利厚生の社宅で、現在どこか空いているのかをひと目で見られるシステムを開発したとします。これを利用した社員らが便利だと感じると、「いいね」のボタンを押せるようになっている。「いいね」の数が増えるという形で、その総務部社員の仕事が「見える化」されているわけです。

 直接部門の場合、顧客は取引先や市場でしょう。けれど間接部門の顧客は直接部門を含めた社内の人々です。顧客に喜んでもらい、評価をもらうこと。それを「見える化」することで、間接部門のモチベーションを上げようとする取り組みです。

 ほかにも、チェーンメールのような形で、誉められた人が別の人を誉めるようなメールを送る会社もあります。自分が誉められたら、別の人を誉める。私自身、誉め方の採点をしたことがありますが、「誉める」ことはやはり、強いモチベーションの向上につながります。

確かに直接部門の社員の中には、「俺らが(間接部門を)食わせてやっている」など、上から目線の人もいます。間接部門の人々は「君たちは稼いでいないんだから」という直接部門からのマイナスの承認にさらされている。問題は直接部門側にもあるように感じます。

太田:だからこそ、やはり間接部門がどれだけサポートしたかを認める仕組みが必要なのだと思います。例えば、表彰も仕組みの1つでしょう。ある会社では、業績貢献などで表彰してもらった直接部門の社員が、一番世話になった間接部門の社員を指名して、間接部門の社員も表彰される仕組みを取り入れています。「ベストサポート賞」のような形で、間接部門に対する感謝を形にする。縁の下の力持ちを評価するようにすれば、間接部門の社員たちの承認欲求も満たされますし、直接部門の社員の意識も変えられます。

 表彰といっても、直接部門は業績などではっきりと結果が分かります。けれど、間接部門は仕事の成果が見えづらい。ですから、賞状などにはその成果を具体的に細かく記述することもポイントです。

 「毎日、書類のチェックを怠らずにミスを防ぐのに貢献した」とか、「総務部の工夫によって働きやすい環境が整って、営業部門から感謝されている」とか。文章にして書いていくと間接部門の人々の努力も日の目を見ますし、間接部門の人々は、書いてもらうことで自分の仕事を改めて実感できる。

 ほかにも毎月1度くらい研究会を開き、間接部門の人々に、1人ずつ順番に、自分が普段心がけていることや努力していることを発表してもらうのも手でしょう。ほかの人は発表を聞いて、質問したりするなどのフィードバックを行う。これも実際に取り組んでいるところでは効果があったそうです。

フィードバックが間接部門を育てる

発表する場を設けることに意味がある、と。

太田:繰り返しますが、間接部門の人々は自分が主役になる機会が少ないわけです。けれども研究会では、自分が中心になって発表し、みんなが話を聞いてくれる。こういう経験は大きなモチベーション向上につながります。要するに、いろいろな形で間接部門に光を当てること。それが何よりも重要なのです。

 もちろん中には、直接部門を目の敵にするような間接部門の社員もいます。けれど、この研究会はそういった人たちにも効果があるはずです。きっとそういう人が研究会で発表すれば、「あなたが言うことは分かるけれど、もう少しルールを緩くできないのか」「こんな方法があるのではないか」という提案も出るはずです。そこに意味があるのです。

 人間というものは、注目をされないから何かをしようとするわけです。注目して評価されれば、ネガティブな気持ちもなくなります。ですからまずは注目することが大事なんです。

 やたらややこしい手続きを設けたり、書類を何度も突き返したりする人は、「関所」を作ることで自分の存在を認めさせたいと思っている。乱暴に言えば、愛情不足でいたずらをして目立ちたい子供と一緒なのです。感謝をして、その人の存在や仕事を認めれば、そんな気持ちもなくなるはずです。認めたうえで、「こういう風に改善してもらえるともっと助かるんですが」とお願いすればいいでしょう。

承認することからしか良い組織は生まれない。

太田:人間関係の摩擦の大半は、承認不足から起こっています。承認すれば、大半の問題は解決します。ひと言で言えば「承認」ですが、尊敬や感謝など、承認の方法は多様にありますからね。

企業の場合、経営者やマネジメント層がまずは考え方を改めるべきなのでしょうか。

太田:経営者は間接部門の大切さや、その仕事の重要性を理解しているはずです。それでも、間接部門とは、先ほど述べたような仕事の特性上、どうしても評価は減点方式に陥りがちです。これはもう、仕組みを変えるしかありません。

 例えば人事考課でも、間接部門の場合は通常、相対評価で減点方式でもある。多くの企業がS、A、B…などと評価をしていきますよね。例えばこのSの上限を取り払ってみる。人事部であれば、ずば抜けた優秀な人材を採用すれば、20点でも30点でも加点されるようにするとか、加点の要素を評価に取り入れるのも手でしょう。

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