英語推進グループのメンバー(撮影:栗原克己)

 「以前は英語で電話がかかってきたら、あきらめてしまう社員もいた」(伊藤氏)。だが、こうした地道な取り組みを経て、社員が任意で受けるCASECの平均点は、13年の380から16年には440に上昇した。

前述したとおり、サトーHDは英語力を昇進や評価の基準にはしていない。松山社長は「どうしてもできない人はいる」と理解を示し、「結果が出なくても頑張り続けるか、周りの人の頑張りをしらけさせなければよい」と言う。英語ができない社員の中には、自ら率先して英語推進リーダーになり、何らかの形で全社的な英語活用プロジェクトに貢献しようとする人もいるという。

 とはいえ、特に海外子会社を統括する経営幹部にとって、英語の必要性は増している。

ネイティブ社員がわかりやすい英語を話し始めた

 例えば、医療事業会社のサトーヘルスケア社長の小沼宏行氏。「英語を使った仕事をしたいと考えたこともなかった」と言うが、現在、米国など海外子会社を統括している。英語の必要性は感じていたものの、13年に公用語化が宣言される前は、英文メールの作成は帰国子女の部下らに丸投げしていた。

サトーヘルスケア社長の小沼氏(撮影:北山宏一)

 公用語化が決まってからは、スマートフォンのアプリなどで英語を勉強。メールも自分で書くようにし、子会社に出張した時も自分で英語を話すようにした。すると「相手が、『小沼のレベルはこれくらいだ』と認識して、合わせてくれるようになった」(小沼氏)。

 「英語が公用語になったからか、海外子会社に勤める外国人社員たちが、むしろ以前より、日本人にもわかりやすい英語を話そうとしてくれている」と小沼氏は分析する。英語公用語化は、日本人社員だけでなく、ネイティブの社員にも変化をもたらした。小沼氏は「結局は慣れ。上手じゃなくてもいいとわかった」と話す。

松山社長は英語でグループの一体感の醸成を期待(撮影:北山宏一)

 サトーHDが英語公用語化を宣言してから丸5年たち、平均点は上がったものの、まだ目標には達してない。松山社長は「業績と社員の英語力の関係は多分、いつまでたってもわからないだろう」と打ち明ける。

 それでも、英語公用化がもたらすメリットへの期待は大きい。例えば、進出国には東南アジアのタイやベトナムなどや、南米のブラジルやアルゼンチンなどもある。こうした非英語圏の国々の拠点が、公用語化である英語を使って成功事例などの情報を共有しやすくなるかもしれない。そうなれば、社内のコミュニケーションは今以上に活性化され、サトーグループとしての一体感が増すかもしれない。そう松山社長は考えている。

 英語公用化が業績拡大に直結するかわからないのなら、松山社長が言うように、公用化の目的を「社内の一体感の醸成」に置くもの1つの道だ。その場合、英語を「話せる」「話せない」という違いで社内の分断を招かないように、英語活用は「ゆるい」ほうがいいのかもしれない。