「満員電車」はビジネスチャンス

鉄道各社では阿部さんの提案が話題になっています。

阿部:直接的、間接的に、「あいつは勝手な提案をしやがって……」という声が聞こえてきますが、私には鉄道会社を責め立てたり、追い詰めたりする考えはありません。

 「鉄道会社は満員電車を放置してけしからん。採算性を度外視してそれを解消し、社会的使命を果たすべきだ」などと言うつもりは全くありません。むしろ、満員電車は鉄道業界にとって大きなビジネスチャンスだと捉えています。

 どんな商品、サービスであれ、ビジネスチャンスの条件は2つです。

 1つ目は、利用者、消費者、市民がすごく困っている、不満を持っている、もっと言えば憤りを感じていることです。そして2つ目は、供給者が莫大なコストをかけずに、そうした不平不満に応える術があることです。

 その2つがそろっているものは、まさしくビジネスチャンスです。

満員電車を解消することで顧客満足度を高め、他社との差異化を進める。これは確かにビジネスチャンスと言えます。

阿部:満員電車に対して、多くの利用者が困り、不満を持ち、大きな憤りを感じていることは間違いありません。一方、社会も鉄道会社も、それに応える術はないと諦めてしまっています。

 「満員電車ゼロ」に向けた処方箋は、地方分散・サテライトオフィス・在宅勤務・時差出勤といった利用を減らす、分散させる需要側への働きかけばかりです。

安く早く供給を増やす方策があるということですね。

阿部:その通りです。数式の羅列とならないよう計算プロセスは省略しますが、大まかな数値を申し上げます。物理の公式に当てはめれば、誰が計算しても同じ結論になり、次の著作「満員電車ゼロへの挑戦」では、数式も示して解説します。

 私の提案をすべて実行することにより、踏切のない区間において、都心折り返しのある路線では80秒おき、それのない都心貫通型の路線では60秒おきまで時隔(列車同士の時間的な間隔)を詰められます。

 1時間当たりにすると、45本と60本です。現行の多くの路線の朝ピークは20~30本なので、2~3倍の輸送力にできるということです。それでも「満員電車ゼロ」とできなければ、総2階建て車両として、さらに輸送力を2倍となります。

 今の線路のまま輸送力を2~3倍にできるとの実感を持ってもらえるよう、今の列車運行の仕方が、良く言えば「余裕」、悪く言えば「ムダ」をいかに膨大に持つかをお話しましょう。

 朝のラッシュ時にダイヤが乱れると、主要駅では、ホームに停まる列車の後続列車が、一定の距離をおいて後ろに停まります。多くの人は、安全のためには100メートルくらいの距離が欠かせないと思っているでしょうが、自動車ではあり得ない長さです。

 そして、先行列車が出発しても、後続列車はすぐには動き始めません。これも自動車ではあり得ないことです。その分、時隔(列車同士の時間的な間隔)が広がっているのです。

 トヨタ生産方式の「改善」の発想で、既にお話した停車時間とともに、こういった「余裕」「ムダ」を1つ1つつぶしていけば、1時間に45~60本の運行もできるのです。どこまでできるかは、鉄道技術者の腕次第です。