懸念はタクシー業界への打撃

良いことずくめですが、心配事はありませんか。

阿部:タクシー業界への打撃が心配です。

 タクシーの稼ぎ時は、路線バスがなくなり、鉄道が混雑と待ち時間で不便になる深夜帯です。さらに、道路渋滞がなく効率的で、長距離利用が多い、料金が深夜割増になると、稼ぎが増える好条件が揃います。

 22時から1時の3時間は、1日24時間の8分の1ですが、おそらく1日の3分の1か、ひょっとすると2分の1くらいを稼いでいるのではないでしょうか。

情報公開で満員電車の現状を明らかに

阿部さんの提言の中で、すぐにできることは何でしょうか。

阿部:満員電車に関する情報公開、「見える化」だと提案しています。

 近年の車両のほとんどは、台車の空気バネを使って上からの荷重を精度高く測定できています。それにより、ほぼ全ての列車の各車両の区間別の混雑率を把握できます。それを公開することにより、満員電車の実情と今後実行する施策の効果を「見える化」できます。

 そして、混雑率250%以上の車両がけっこう多い、朝ピークの都心近く以外にも混雑率が高い区間がある、深夜の満員電車が壮絶といったことが明白になるでしょう。

 それらを以て鉄道会社を責め立てるばかりでは、問題解決が遠のきます。都も国も、満員電車という共通の敵を退治する、鉄道会社の“同志”として振る舞うべきです。メディアも、現状の問題点をあげつらうばかりでなく、今後の改善に向けた前向きな報道をして欲しいです。

具体的には、どうするのですか。

阿部:「満員電車ゼロ」は、効率を向上して輸送力を増強することと、着席サービスに割増料金を課すことで達成できると、提案を重ねています。

 それを鉄道会社だけで推進しようとすると、「安全軽視」「盲目的な利潤追求」といった反対を受けます。都や国が、それに対する防波堤となり、利用者と鉄道会社の間の“通訳”を務めることにより、対策がスムーズに進むのではないでしょうか。

 ある鉄道会社の方から、「我々だけでは反対を受ける施策を、都が前面に立ってくれれば実行しやすくなる」と伺いました。

 決して悪い意味の“官民癒着”となってはいけませんが、政治家である知事、都をはじめとした行政スタッフ、実際に実行する鉄道会社、それを支える関係メーカーなどが、適正に役割分担しながら、誰もが望む「満員電車ゼロ」を実現したいです。

 2016年に国土交通省がまとめた「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の交通政策審議会答申においても、以下のように明文化されています。

 「朝のピーク時のみならず、ピークサイド、帰宅時間帯、夜間等の混雑状況についても鉄道利用者に対する「見える化」の検討を鉄道事業者において進めることが重要である。そのうえで、輸送需要と輸送力の関係について、区間別・時間帯別の詳細な分析を行い、需給バランスを踏まえた運行サービスを設定すべきである」。

 国の施策とも合致しており、東京都から国へ強く要請すれば、行政指導権を持つ国が鉄道会社を指導し、早期に「見える化」されるでしょう。さらに国は輸送力増強まで明文化しています。