多くのエレベーターは、停まる前にドアが開き始める

 エレベーターのドアの開閉が参考になります。次にエレベーターに乗った時に、ドアの下をずっと見ていて下さい。多くのエレベーターは停まる前にドアが開き始め、効率を上げています。停まるまでは開き幅が狭く、飛び出したくても飛び出せません。

 到着1秒前にドアを開け始め、ドアが閉まると同時に動くエレベーターと同じことをすればよいのです。停まってから3秒してドアが開き始め、ドアが閉まり終わってから8秒して動き出すエレベータを思い浮かべてみて下さい。あまりの効率の低さに気付くはずです。

 エレベーターでも、人がドアに挟まったまま動いた悲惨な事故は皆無ではありませんが、人間の叡智により安全度は確実に高まっています。日本人が得意な“ものづくり”の力を発揮すれば、鉄道も、人の注意力に頼らずに、安全と効率の両方を高められるイノベーションを実現できるはずです。

海外でドアを開けるタイミングを早めている事例はありませんか。

阿部社長は2016年11月に『満員電車がなくなる日 改訂版』(戎光祥出版)を出版した

阿部:ドアを開けながら走っているインドなどは例外として、ヨーロッパの地下鉄で電車が停まる前にドアを開けている例があります。

 利用者が自分でドアを開ける設定にしている路線があり、停車の前に自ら開けるのです。一定速度以下になるとドアを開けられ、万が一に怪我をしたら自己責任です。

 それによる社会問題は発生しておらず、日本でも到着1秒前にドアを開け始めることは受け入れられると考えます。

日本で通勤ラッシュが今よりずっと激しかった頃は、どうしていたのでしょうか。

阿部:1956年11月より以前は、田町と田端の間で山手線と京浜東北線は同じ線路を走っていました。朝のラッシュ時は、両線を併せて1分50秒おきで運行し、現行の最短2分20秒おきより短い運転時隔でした。

 今より信号の性能は劣り、車両の加減速度は低く、ドアは片開きで幅が狭く、しかも混雑率は高かったのにです。

 到着時は、停車前にドアを開け始めていました。出発時は、ドア閉め完了と同時どころか、ドアの3分の2の幅が閉まれば走行中に転落することはないなどと言って、出発させていました。

 さらに言うと、先行列車はしばらくすれば前へ進むとして、一部では停止信号でも進入したり、注意信号の45km/h制限を超過して運転することで、短い時隔を実現していました。

 その結果、1972年には日暮里で、1988年には東中野で、信号冒進による追突事故が発生しました。

危険です。今はそうした運用は受け入れられないでしょう。

阿部:もちろんです。テクノロジーを活用して安全を担保すると同時に、昔以上の効率性を実現しましょうと提案しています。

 ホームドアの導入はせっかくのチャンスなのに、国土交通省の指示は、世論をバックに「事故を起こすな」のみです。「安全を前提に、効率性を上げよ」と指示を出せば、鉄道の利便性を大きく向上できます。