ドアが閉まってから発車まで10秒以上かかるのはムダ

輸送力増強を安く早くできる方策に、他にどんなことがありますか。

阿部:例えば、「ドア閉めと同時の出発」です。

 JR東日本を除いた全路線において、全てのドアが閉まったことを駅員と車掌が目視で確認し、運転士に連絡してから出発させます。実際に閉まってから10秒以上を要している駅も多数です。

 10秒くらい余計にかかっても安全には代えられないと考える人が多いでしょうが、それによる効率低下の代償は思いのほか大きいのです。

 単独の列車として考えるなら、各駅で12秒ずつ余計に停まるとすると、所要時間が10駅で2分伸びます。それ以上に大きいのは、列車を群として考えるなら、12秒余計に停まるとすると、その時間だけ後続列車をせき止めることです。

 余計に停まる時間をゼロとできれば、列車と列車の運転の時間間隔を12秒短くでき、10%くらい輸送力増強できます。その分、各駅での1列車当たりの乗降人数が10%減り、停車時間をさらに短くできます。

満員電車は解消していない(写真:北山宏一)

事故の心配はありませんか。

阿部:テクノロジーの活用で、安全を担保することが絶対条件です。ドア挟みの検知感度を高くし、手早く再開閉させます。以前の車両は空気圧でドア開閉していたので、キメ細かく制御できませんでしたが、近年の車両は電気でドア開閉しているので、キメ細かく制御できます。

 駅員と車掌の目視で確認することこそ、むしろ危険です。首都圏の鉄道車両のドア閉めは、1日当たり1,000万回以上でしょう。人の注意力では1億回に1回見落とすとすると、それは10日に1回以上となります。

 ハインリッヒの法則(1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する)で、その内の300回に1回が重大事故になるとすると、8年に1回以上となります。

 実際の事故発生件数はそのくらいで、人の注意力に頼る限りゼロにはできず、起きるたびに当事者を責めることの繰り返しでは、あまりに非生産的です。

とは言え、テクノロジーによりドア挟み事故をゼロにできますか。

阿部:ホームドアを入れる時がチャンスです。

 山手線に導入されているシステムでは、電車が到着してからドアが開き始めるまで3秒くらい、全てのドアが閉まり終わってから電車が動くまで8秒くらいかかっています。併せて1駅11秒のロスです。

 所要時間と運転時隔が伸びることは、先ほどお話した通りであまりに大きな代償です。

 センサーの性能を向上させ、安全判断と情報伝達の時間を短くし、ドア挟み、または車両とホームドア間の居残りの場合は絶対に電車を動かさず、異常のない場合はドア閉めと同時に出発させます。

 電車の到着時には、停車と同時どころか、停車1秒前にドアを開け始めても大きな危険はありません。到着するまで1秒の間には、人が通り抜けられるほどの隙間ができないからです。