
11月18日朝。自宅を出た記者は東京地下鉄(東京メトロ)東西線の浦安駅(千葉県浦安市)前に着き、東京へ向かう電車を待っていた。
記者は東京都品川区在住である。当然、最寄駅は浦安駅ではない。なのに、なぜ朝っぱらから、都心部を挟んで反対側にある浦安駅にわざわざ向かい、そこで都心に逆戻りする東西線の車両を待っていたのか。先輩記者から、「日本一の混雑を体験してこい」と命じられたからだ。
国土交通省のデータ「東京圏における主要区間の混雑率」(2015年度)によると、東西線の木場駅(東京都江東区)から隣の門前仲町駅(同区)に向かう間の混雑率は、午前7時50分~8時50分の平均で199%に達する。これは、データで紹介されている主要区間の中で最も高い。
実際、どれほどの混み具合か。千葉県から東京都内に向かう「中野・三鷹方面」の地下鉄に乗ってみた。地下鉄駅の乗り換え口などの位置を確認し、最後尾の車両が最も混んでいるだろうと予測。午前8時3分、へその下に力を入れ、浦安駅から恐る恐る最後尾車両に乗り込んだ。
浦安で既に「混雑率200%」
浦安駅で乗った時点で、混雑率は既に200%程度の印象だった。200%は「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める」。東西線は、浦安の北東の西船橋駅(千葉県船橋市)が、千葉方面からの始発。船橋市や浦安市は東京のベッドタウンとして発展を続け、人口はここ5年で船橋市が3%、浦安市も2%増えた。東西線は東葉高速鉄道線と相互直通運転をするほか、JR総武線の津田沼駅(千葉県習志野市)から東西線を経由する列車も多い。人口の増加と相まって、千葉方面からの東西線は混雑しやすい状況にある。
もっとも、混雑率の目安が示すとおり、まだ手を動かす余裕はある。スマートフォンをいじったり、文庫本を読んだりして過ごす乗客が多く見られた。
車内の雰囲気が変わり始めたのは8時6分。東京都内に入り、次の葛西駅に着いてからだ。新たな乗客がどっと車内に入り、一気に圧迫感が強まる。記者の近くにいた男性が後ろから押され、思わず眉間にシワを寄せていた。
1つ先の西葛西駅ではさらに乗客が増え、揺れる度に体が周囲から押されるほどの混雑ぶりになった。体感で混雑率230~240%はあるだろうか。ここまで来ると、下に置いた手を動かすことも難しい。
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