「適度なおいしさ」と「買い続けられる価格」。クボタがいただきを含めて、シンガポールで展開する米は、この2つのポイントを両立したものだ。そのため、現地の飲食店で採用する企業は増加傾向にある。高橋氏は「2017年は1500トン弱を取り扱った。引き合いは増えているので、18年は2000トンまで拡大できそう」と意気込む。

クボタがシンガポールで販売する米。スーパーなどで販売されている日本産の米に比べて、価格が安い

 一般的に日本で野菜といえばサイズが大きいほど高く売れる作物が多い。だが日本の常識が海外では通じないこともある。いま輸出を目指す多くの生産者が選ぶ市場に香港がある。ここでは野菜は小さい方が人気が高いのだ。

 その背景には台所の狭さにある。香港は土地が狭く人口が多いため、間取りもコンパクトな物件が多い。共働き世帯も多く、包丁を使わずにそのまま蒸し器で調理したいというニーズが強い。香港などへ日本の農産物を輸出する世界市場(東京・港区)の村田卓弥社長は「日本とは、まるでニーズが違う。その違いを理解せず、ただ美味しいだけでは現地で受け入れられることはない」と話す。

 この違いに気づいた企業はほかにもある。宮崎でさつまいもの生産や販売を手掛けるくしまアオイファームだ。さつまいもも、国内で人気なのは大きいサイズだ。重さが100グラムを割ってしまうと、地元の農協では引き取ってもらえない。規格外で商品として扱われなかったが、海外向けには商品として売れる。

 くしまアオイファームは農家から100グラム以下のさつまいもを買い取り、香港やシンガポールなどへ輸出している。国内向けには500グラムの袋詰めパックで3本ほど入れるところを、海外向けには5~6本入れるのだ。農家にとっても10%~20%の収入増につながっている。下出淳平副社長は「小さなさつまいもは傷みやすいので、包材を工夫するなどしてきた。農家にとっても新たな収入源となり、我々との関係も深まっている」と話す。同社は昨年度500トンのさつまいもを海外へ輸出した。今年度は1000トンの輸出を目指している。

くしまアオイファームがシンガポールで展開するさつまいも売場

 こうしたように国や地域によって嗜好やニーズは大きく異なる。一般的な商品のように市場調査が欠かせない。これまで農家は生産の機能しかなく、マーケティングを磨く必要がなかった。農産物の世界でも「良い商品さえ作れば買ってもらえる」といったプロダクトアウトではなく、マーケティング力が問われている。