こうした労働力の増減を新しい発想で解消しようと乗り出したのが、山梨県南アルプス市の金丸文化農園だ。

 「今日は1週間の作業が2時間で終わりました。ありがとうございます!」。集まった人々にそう挨拶したのは、金丸文化農園の農園主である金丸直明氏だ。2017年11月4日、同農園は就農体験イベント「金丸文化農園感謝祭」を開催した。

 集まったのは、EC(インターネット通販)などを通じて金丸文化農園の桃などを購入したことがある消費者や、農家ではない近所の高校生など約30人。参加者は簡単な農園の説明を受けた後に、農園に肥料を撒く「追肥作業」を体験した。イベント参加者は3000円を支払う。

イベント参加者と一緒に農作業をする農園主の金丸直明氏(右、写真=陶山 勉)

 本来であれば、金丸氏は仕事を手伝って貰う対価としてお金を支払う立場のはずだ。しかし、東京や非農家の子供などにとっては、農作業の体験は一種のイベントになる。

 作業が終わればバーベキューを用意し、山梨県の名産品のワインや、ワインに牛肉を漬け込んだ「ワインステーキ」などを振る舞う。イベント後には、地元の温泉まで送迎する。こうして、本来は仕事である農作業は、大人も子供も参加して1日楽しめるイベントに変わる。3000円なら安いと考える人も少なくない。

バーベキューを満喫するイベントの参加者(写真=陶山 勉)

 南アルプス市の果樹園ではさくらんぼ狩りなど、収穫時期の労働力をイベント化して補うといった取り組みがあった。金丸文化農園の就農体験イベントは、その延長上のアイデアともいえる。

 金丸氏は「バーベキューなどの原価を考えれば、イベントの収益はゼロか少しだけ黒字。みんなが楽しめて、追肥作業もすぐに終われば一石二鳥だ」と話す。

 1日のイベント開催で1週間分の作業が終わったことで、金丸氏は農作業以外に6日間注力できることになる。新しい流通先を探したり、次のイベントを企画するなど、収入を増やすための工夫をする時間が得られるとの考えだ。

 「流通経路や栽培する品種などが多ければ、天候不順などでも立ち直れないほどの被害は受けない」と金丸氏は話す。テレファームや金丸文化農園のように、収入を多様化できれば農業はもっと身近な産業になる。