いざ、農業を始めようにも、安定的な収入がなければ、農業を一生の仕事として継続することはできない。不作だけでなく、豊作の場合も価格が下がるなど農家の収入は不安定になりがちだからだ。だが、最近では農作物の出来に頼らない新たな収入源の構築に動く農家や、支援するサービスも出始めた。
「もうすぐホウレンソウが収穫できそうです」。愛媛県の農家がスマートフォンの画面上で作物の成長具合を報告するのは、地元農協の職員や上司でもない。ネット連動型の農業サービス「ラグリ」というサービスの利用者だ。

ラグリは、サービス利用者がインターネット上の仮想空間で育てた野菜や果物を、農家が実際の畑で栽培する。実際の畑で収穫できた作物はサービス利用者に届き、食べることができるという仕組みだ。農家は、サービス利用料を受け取ることができ、農作物の販売以外の収入源を確保することができる。
「農作物以外にも収入源が増えれば、農家の収入が安定し、就農をしたいと思う人が増えると考えた」。こう話すのは、楽天と連携してラグリを提供する農業ベンチャーのテレファームの遠藤忍社長だ。遠藤氏が目をつけたのは、農作物の栽培過程だった。これまで農作物を収穫するまでの作業に過ぎなかった栽培過程をサービス化して、販売する仕組みを作った。
通常、農家の収入は農作物の収穫と連動している。万が一、台風などの自然災害が起きて、収穫前の畑が壊滅的な状況になれば、収入がなくなるリスクがある。不作だけでなく、豊作になれば、市場価格が暴落する可能性もある。さらに新規就農者の頭を悩ませるのが、農作物の規格だ。就農したばかりの人が、規格に合うような作物を栽培するのは難しく、最初のうちは収穫したうちの半分以上が規格外のために買い取ってもらえないこともある。
こうした現状に苦労し、離農する人は多いという。遠藤氏は「いまの新規就農者は年収200万円ほどしか稼げず、苦しい。年400万円ほどになるのが理想だろう。この差をラグリで埋めることができれば、就農のレールを敷くことができるかもしれない」と話した。
お金を払って働く消費者
定期収入が無いことと同じく農家を悩ませるのが、労働力の変動だ。普段は少人数で作業するが、収穫時期だけは親戚やパート従業員を集めて一斉に作業する農家が少なくない。
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