さいたま榎本農園と同じく、兄弟でパートナーを組むのは、前川農園(広島県廿日市市)だ。姉の前川すずみ代表と、妹の池田淳子副代表の二人三脚で野菜を栽培する。前川氏は姉妹の関係性について「性格が正反対の姉妹で意見が全くあわない」と話す。

 この性格の違いを生かし、前川農園では姉と妹で担当する畑を変えている。自らがベストだと思う育て方でそれぞれ作物を栽培し、その出来栄えを確認しあいながら、栽培方法を改良することで、品質向上につなげているのだ。「1つの畑で2人同時に作業をしたら喧嘩になるけど、これならお互いが自分の畑の世話だけやればいいので、無駄な衝突は起こらないし、妹の栽培方法から勉強になることもある」とメリットを話す。

 「パートナーの存在は、就農を成功させるカギ。作物は毎日生きているので、1人だと休めず、大変」。こう話すのは、兵庫県淡路島で就農したブタとコジカの農楽園の田中孝樹氏だ。孝樹氏は、パソナグループが兵庫県淡路島で運営する「パソナチャレンジファーム」の卒業生。チャレンジファームで栽培技術や農業経営を学び、今年トマト農家として新たな一歩を歩み始めた。トマトを育てるビニールハウスは、廃業した地元農家が使っていたものだ。先日入籍したばかりの奈津子氏と3種類のトマトを栽培している。

 孝樹氏は、「農業は“共同”でやる作業が多く、1人だと心が折れそうになる」と振り返る。実は奈津子氏は海外で料理人として修行をしており、帰国して2人で農作業をやるようになったのはつい最近のことだ。就農をして最初数カ月は孝樹氏1人で作業をしていた。たとえば、奥行き40メートルもあるハウスに1人でひもを吊り上げようとしても、1人では難しい。さらに作物は人間の都合を考えて、成長してくれない。1人では作業を終えるのが困難なスピードで作物が急成長したり、病気にかかったりする可能性がある。しかし、奈津子氏が隣にいる今では、2人で協力して作業ができるという。

 もう1つ、地域との関わりという観点でもパートナーがいた方が都合はいいという。地元の人は、都会から来た新規就農者に対して「本当に農業を続ける気があるのか」、「地域にとってプラスになるのか」など見定めている。特に1人で地方に移住してきたのであれば、環境になじめず、すぐに去ってしまうのではないかと不安になりやすいようだ。そうした点においても、「2人であれば、地域の人が受け入れる姿勢が違うように感じる。2人でやるメリットは多い」(孝樹氏)。

 就農当初は資金も少なく、生産性を高められる農機具の購入は難しい。数年間は手作業が多く体力勝負となってしまうことも多い。だからこそパートナーの存在は欠かせない。新規就農者を増やすためにも、パートナーの重要さをPRすることが重要な取り組みになりそうだ。

前川農園は姉の前川すずみ代表と、妹の池田淳子副代表の二人三脚で野菜を栽培する