
1979年生まれ。2002年、東京大学農学部国際開発農学専修卒業。2004年、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修士課程修了、日本総合研究所へ。現在同社創発戦略センター・シニアスペシャリスト。農業ビジネス戦略、スマート農業など先進農業技術の専門家として知られる。農林水産省、内閣府などの有識者委員を歴任(写真:竹井 俊晴、以下同)
安倍政権が農業改革に注力してきたこともあり、かなり国内農業の雰囲気が変わってきた気がします。
三輪泰史(以下、三輪):ここ何年かで外部環境は本当に変わりました。安倍政権が「強い農業」に向け、農業改革に本腰を入れる前の国内農業って、本当にだめな世界だったなと思いますね。
少子高齢化への対応が意識される中、コメの生産調整(減反)の見直しや農協改革など一連の対応策を経て、農業者も農業関連団体も、農業を変えるために前に進んでいこうという機運が出てきています。
広がる農業変革の気運
私は毎週農業の現場に出ていますが、「農業を変えていかないといけない」ということに関しては、先端的な農業法人から小規模な家族経営の農家、地域農協まで皆さん、共通した思いになってきていると感じます。
三輪さんはAI(人工知能)などを駆使した「スマート農業」の伝道師のような役回りを担ってきています。省力化や生産性向上が進みつつある中、日本農業の未来図をどのように描いていますか。
三輪:これからは収益性の高い野菜や果樹といった作物については専業農家が法人化し、やる気のある方々を巻き込みながら地域の核になっていく。そんな動きがより鮮明になっていくでしょう。
私の試算では、ロボットやICT(情報通信技術)、データの活用などによるコスト削減や生産性向上などで、野菜専業農家の一人当たり農業所得が年約1000万円を確保できるようになるのはそう難しいことではないと見ています。
一方で、一連の農業改革やスマート農業の技術は大規模生産だけでなく、小規模で儲かる農業にも役立つはずです。農家の思いを伝えためにSNS(交流サイト)を活用する動きも広がってきています。
スマート農業は大規模化のためと受け取られがちですが、日本農業は大規模至上主義だけでは成り立ちません。農業には単なる食料供給にとどまらない機能や価値があるからです。
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