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「こうしなさい」とは絶対に言わない

ほぼ日では「おもしろいことをしたい」という気持ちを大事にしていますが、自分がおもしろいと思っても、人をおもしろがらせるのはそう簡単じゃないとも思います。

佐藤:決して簡単ではありません。僕の仕事はデザインですが、何でもなさそうに見えるものでも、かなり追い込んで突き詰めないと、いいものはできないと思いながら仕事をしています。

 ほぼ日手帳だってそうです。ほぼ日手帳の中面を見てみてください。それぞれのページには、縦横に点線が入っていて、それを交差させて、方眼のマス目になっています。

 僕が最初にほぼ日手帳を見せてもらった時、縦の点線と横の点線の「交差点」はアトランダムで、マス目によって、点線の位置が違っていました。それを僕は突き詰めて、すべてのマス目の点線の位置が同じになるようにデザインし直しました。

 マス目ごとに点線が交差する場所が違っていると、デザインの言語がマス目によってバラバラになってしまいます。それを同じ言語に整えたわけです。手帳のベースとなるマス目はできるだけ語らない方がいいし、そのためにはデザイン言語を統一して、整える必要があったのです。

聞いていて、なるほどと腑に落ちるおもしろいエピソードですね。

佐藤:ほぼ日がやろうとしていることも、「楽しい」だけではなくて、社員の皆さんが自分を追い込んで、突き詰めているところが必ずあるのだと思います。そして、そこに糸井さんの厳しい目が働いていると見ています。

 糸井さんは社員に向けて、「こうしなさい」と言うことは絶対になくて、笑顔でやわらかくやわらかく、でもズバッと指摘するのだと思うのです。

 普通は「こうしなさい」と言うものですし、つい言いすぎてしまう人も多いと思います。けれど糸井さんは、そうしてしまうと、社員が自分の手足になってしまうということをよく分かっているのだと思います。

 だからこそ、ちょっと手前で抑えていい空気をつくっているように感じます。

実際に一緒にお仕事をする中で、そう感じた場面はありましたか。

佐藤:あります、あります。「今年はもっと良くしよう」「どうしたら良くなるか」というアイデア出しの会議で、糸井さんはすごく肝心なことだけを言って、あとはみんなで考えるというふうに、あえてしていますから。