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自分の成長を感じられる会社

田中:この間、ちょっとおもしろい話を聞きました。ある国内証券会社に勤めていた人が、外資系証券会社に転職したところ、年収が2倍になったそうです。

 ただし外資系証券会社は年収に見合うだけの成果も求めます。年収に見合う人になる必要もある。そこで、会社はどうしたと思いますか。

 それまでは与えられた仕事を実行するだけだった人に対して、その枠を外して、本人のアイデアや能力、知恵や工夫を発揮できる環境を与えるのです。すると本人はそれまで使っていなかった知恵や工夫ができるようになるそうです。

 転職したその人も、仕事がおもしろくなって、十分に成果を出すようになったそうです。完璧なフリーハンドで、全部自分で考えて、判断し、実行して、成果を出す。そういう人を育てているのでしょうね。

 まったく枠組みのない環境に置かれて、その人はそれまで使っていなかった知恵や力が出てきて、それまでよりも仕事がおもしろくなって、成果を出ようになったのだと思います。

 私はこの話を聞いて、環境を与えられないために能力を発揮しきれていない人がたくさんいるのではないか、と思いました。同時に、人間にはまだまだ可能性があるとも。

 糸井さんは、そこのところを信じているのだと思います。

 ただ、これと同じことを、日本の組織でできるのかどうかは、一つの挑戦であり、誰もがそういった状況で同じようにできるわけではないことも分かっています。

 ただ少なくとも、私は、社員が自分の能力を発揮できる会社にしたい。そう改めて思いました。

そのためには何が必要でしょう。

田中:邪魔するものがない、ということではないでしょうか。

 「これをやりたい」と社員が言ってきた時、無下に却下することはしないことにしています。

 「どうしたらできるだろう」「いろいろ検討した結果、やっぱり無理」といったように、まずは「やってみる」方向で検討します。

ほぼ日では、「好き嫌い」で手を挙げていいけれど、なぜ「好き」かを自分で掘り下げ、周囲と相談しながら進めていく仕事のやり方をとっています。

田中:私もチャレンジしていきたいと考えているところです。

ただ最近では企業側のコンプライアンス意識が高くなっていて、必要以上にルールが増えて、社員はそれにがんじがらめになっている印象も受けます。

田中:社員がそうなってしまうのは、私もつまらないことだと考えています。せっかく会社で働いているのだから、自分の成長を感じられるようになってくれればうれしいですよね。

 最近ではセクハラやパワハラをめぐる問題も多いですよね。もちろん、こういった問題にはしっかりと対処していくべきだと思うのですが、トラブルの中の一部分は、気心が知れない人が突然、不快な発言や行動をしたことで問題になってしまうケースもあるのではないかと感じています。

 そうならないためにも、しっかりした信頼関係を築くことがとても大切なのです。

 ただ誰もが同じ基準を持っているわけではないので、規則でしばらざるを得ない。難しい問題ですよね。