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「人ありき」の経営ができるか

なぜ、ジンズを大きくしたのですか。

田中:昔、会社をどんどん大きくしたかった時期がありました。「成長こそ善」と思っていて、あの頃は資本主義に毒されていたのかもしれません(笑)。株価や売上高、利益に対してものすごく敏感だったんです。

 ただ、今ではそういうことだけでは経営できないとも思うようになって、あまり気にしなくなりました。

 それでも会社は意外と大丈夫で……。いや「結果的に大丈夫になる」と言った方が正しいのかもしれませんね。

 売上高や利益を性急に伸ばそうとすると、業績ばかりが優先され、働き方や仕事のプロセスがあと回しになってしまいます。どうしても、目先の数字ばかりにとらわれてしまう。

 そうではなく、「自分たちがどうありたいか」というところから出発しないと、途中でおかしくなってしまう。

 最近次々と露見している大企業の不祥事の多くは、そういうところに根っこがあるのかもしれません。その企業の中で働いている人たちは、「自分のため」というよりも、「組織のため」に不正に手を染めてしまったのではないか、と。

 糸井さんとお付き合いする中で、そう思うようになって、自分に対して「どうありたいか」と問うてみました。

 そこで見えた答えは、決して「自分が生きている間に世界一になりたい」ということではなかったんです。それよりも、もっと長きにわたって繁栄する会社にしたい。それが自分の答えでした。

 ちょうど4年くらい前、うちの会社のビジョンを研究しはじめた頃のことです。

 そして、糸井さんが実践しているように、「人ありき」の経営って大事だなと思うようになりました。

そのために大切なことは何でしょう。

田中:究極は、自分が納得できる仕事は何かを考えて、それをやっていくと思うこと。

 そうやって、社員が自分の働いている会社を好きになってくれたら、ほぼ日がそうであるように、当社も確実に強くなっていく。そう考えています。(後編に続く)