ほぼ日とフェイスブック、アマゾンの共通点

糸井さんの考える経営は、人ありきということも大きな発見でした。

藤野:人間ベースでビジネスをプロデュースしていくのが本質に適っていると、本能的に分かっているのではないでしょうか。

 近代経営の根底には、「組織に人間を合わせる」という考えがあります。ただ、それを追究した結果、会社という場が辛い感じになっている。心を病む人も増えていますよね。

 その点、糸井さんは人を組織に合わせるのではなく、組織を人に合わせる方向でほぼ日を率いています。その方がストレスも少ないし、社員が人間性を発揮することもできる。経営において人こそが大事であり、食べるとは何か、読むとは何か、暮らすとは何か、生きるとは何かということについて、社員と一緒に考え、つくっていこうとしているのだと思います。

社員に向けて「考え続けることが大事」と糸井さんはよく話していますが、「こうしなさい」と押しつけることはありません。

藤野:糸井さんには、ものすごい定義力があります。ただ、それを押しつけることは絶対にしません。

 「俺はこう思うからみんな記憶して、その通りにやってみなさい」というのとは逆のやり方で、「それの何がおもしろいの?」「あなたにとってご飯の意味することって何?」と話をしながら、社員一人ひとりが本質的な価値を見出すように仕向けています。

 その意味では、ほぼ日はドメスティックな会社ですが、実はものすごいグローバル性を持っていて、世界のビジョナリーカンパニーに通じるものがあります。米国のフェイスブックやアマゾンが近いと思っているんです。

どういうところに共通性があるのでしょう。

藤野:ひと言で言えば、「哲学的思考」です。例えばアマゾンでは、ジェフ・ベゾスたちが「買い物とは何か」ということを徹底的に追究してビジネスにしている。フェイスブックでは「コミュニケーションって何」というところを突き詰めてビジネス化しています。

 いずれも、「哲学的思考」が企業の根幹で大切であると分かっていて、経営トップや経営チームの中で、それを考え抜こうとする姿勢があります。

日本に「哲学的思考」を持つ企業はありますか。

藤野:大きな会社ではほとんどないと言っていいのではないでしょうか。だから社員は、組織のパーツにはめ込まれて疲弊してしまう。

 けれどほぼ日では、そうしたくないという思いがあって、「そもそもあなたはなぜ生きているのか」「ここで何をしているのか」といった「哲学的思考」を鍛え続けている。だから発信されるコンテンツも当然、その延長線上にあって、「哲学的思考」がしみ込んでいる。そして、受け手の心の中に自然と入っていくものになっているのだと思います。