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「普通のこと」を実践するのが実は難しい

これからはほかの日本企業も変わっていくのでしょうね。そんな中で大きな企業はどうなっていくんでしょう。

加藤:大企業も変わっていくと思います。クリエイティブでないと生き残れない社会になると思いますし、そうでないと人も集まらなくなるはずです。

 組織の大きさとクリエイティビティの両立というのは、一つの挑戦ですよね。僕らの会社はまだ小さいのですが、ほぼ日はずいぶん先を行っていて、会社を大きくしていくことと、クリエイティビティーを保つということを、両方をやろうとしています。

 実は先日、僕はほぼ日の株主総会に出席しました。そうしたらある株主が立ち上がって、「やさしさとかダイバーシティーとかおっしゃっていますけど、(ほぼ日の)経営陣はおじさんばっかりですよね」と質問していたんです。「ほぼ日くらいの会社なら女性比率が半分でもいいはずだし、外国人がいてもいいんじゃないですか」と。

 その質問に対して、糸井さんはかなり真剣に答えていました。「確かにおっしゃる通りで、今はたまたまこういう状況だけれどちゃんとやっていこうという意思はあります」という趣旨の答えをしていました。

 ほぼ日の株主総会は、株主の質問時間そのものが長いんです。本当に誠実に株主と向き合っている。「今日のダーリン」も水曜ミーティングも株主総会も誠実なところが共通しています。

糸井さんは、「誠実」と「信用」という言葉をよく使っています。

加藤:誠実というのは「姿勢」ですよね。それを続けた結果、「信用」される。だからかっこいいなと思うんです、糸井さんを見ていると。

 クリエイティブに生きる選択をして実行していて、それを続ける誠実さってかっこいいですよね。おしゃれとか格好いいと感じるのはそういうところなんです。

ほぼ日の経営を見て、「じゃあ自分も明日から実践してみよう」とできることはありますか。

加藤:実はほぼ日は、ほかの経営者でも実践できることをしていますよね。実際にはなかなかできないんですが(笑)。要するに、全部を普通にちゃんとやっている。

 普通のことをちゃんとやるというのがすごいことだと思うんです。もちろんセンスがいいとか、頭がいいとか、いろいろな要素があるけれど、結局は生活と向き合うとかお客さんと向き合うとか社員と向き合うとか、普通のことを普通にちゃんとやっているんだと思います。

 だから、すごい。足が速い人が速く走りましたという話とは違います。そして実践するには、やっぱり知性と意思が必要なのでしょうね。めちゃくちゃかっこいいなと思います。