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上場でほぼ日は変わった?変わっていない?

糸井さんは乗組員にもクリエイティブに生きてほしいと思っていて、それをいろいろな方向から伝えようとしています。クリエイティブに生きるということは、誰にでもできることなのでしょうか。

加藤:ある程度はできるようになると思います。そもそも、クリエイティブって、誰でもやっていることでもあるんですよね。たとえば、豆腐を切った上にネギとショウガを刻んで乗っけるなんて、すごくクリエイティブな行為ですよね。そんなふうに、みんな普段からやっていることなんです。

 ただどうしても、その価値を見落としがちになる。そういうことを組織の中で伝えて、みんなで考えて、実行する。水曜ミーティングで糸井さんはひたすら語っているのはそういうことだと思います。

 僕が経営を始めてとても驚いたのは、社内外を問わず、「こんなにも同じ話を何回もしなくちゃいけないのか」ということでした。人と一緒に何かをするためには、社員に対してもメディア取材も投資家への説明も、同じ話を何度も繰り返します。

 話す相手によってある程度内容は変わるけれど、コアの部分は変わらない。それって、結構大変なんです。

 けれど、いろいろな人と何かをするということは、そういうことなんですよね。

 それをあの糸井さんが、すごく本気で、丁寧に、手を替え品を替え、途中でダジャレとかまで挟みながらやっている。

 もちろん同じやり方は、僕にはできません。だから、違うやり方を考えます。毎週みんなの前でおもしろいことを話すのは無理なので、その代わりに全社員と面談をしたりとか、試行錯誤してますね。

ほぼ日は2017年に株式上場しました。何か変化を感じますか。

加藤:リアルタイムに途中経過を見ているんですが、変化は感じますね。新しい人が増えてダイナミズムが増していると感じます。リアルなイベントとか、新しい事業も増えていいますし。

 イベントについては、僕たちも事業として参考にしています。僕たちはウェブサービスの会社ですが、年に一度、大きなイベントを開いていますし、細々としたイベントはしょっちゅう開催しています。

 「note」関連のイベントは基本的に、クリエイターに機会を提供するために実施しています。クリエイターのアウトプットの場を増やす、あるいはクリエイターに「こうやってやるといいよ」と伝えるという両方の意味があります。

 同時に、会社の社員にとってのユーザー、つまりお客さんとの出会いの場にもなります。そういうことって重要だなと、ほぼ日を見ていて思っています。ほぼ日は「生活のたのしみ展」とか、いろいろなイベントを開いていますよね。

 インターネットの特徴は、「フラット」「オープン」「多様性」ですが、これをほぼ日は会社としても体現していて、社会にまでそれを広げようとしている。そしてこれは、時代の潮流でもあると思います。

そういった糸井さん流の経営手法を、ほぼ日の社員たちは引き継げると思いますか。

加藤:それは今いるほぼ日の社員のみなさん次第ですよね。もちろん可能だと思いますよ。糸井さんがあれだけがんばってやろうとしていることですし、きっとおもしろくなるんじゃないでしょうか。ほぼ日は本当に、糸井さんのすごい作品だと思います。