Mさんは一人娘で、母親に万が一のことがあった場合の法定相続人は自分しかいない。実家の土地は100坪あり、評価額は当時でゆうに1億円を超えていた。一方、父親が残した金融資産は1500万円余りで、母親は遺族年金でつましく暮らしている。

 当時で60歳を過ぎた母親が5000万円を超えるローンを抱えることに不安がなかったといえば嘘になるが、「家賃で返していけば10年で完済できるから」と畳み掛けられ、何も言い返せなかった。
 そして今、そのアパートは3割の部屋が空室だ。  この10年ほどで周辺に同じような1DKのアパートが乱立した一方、エリアの人気は下火になり、駅前の不動産屋には入居者募集の貼り紙が目立つようになった。

 必然的に家賃相場も低下傾向で、ローンの返済計画は大幅な見直しを余儀なくされている。

 顔を出すたびに母親から「空き部屋も毎日掃除をしておかないといけないから大変」とか、「2階の若い人が夜中に大音量で音楽をかけるせいで眠れない」といった愚痴を聞かされ、実家への足も遠のきがちだ。

 近年は外国人の入居希望者が急増しているが、昔かたぎの母親はそれをよしとしない。夫からは「老朽化が進む前に建物ごと売却した方がいいんじゃないか」と言われている。

 愛娘への相続対策のアパートは、いつの間にか、その愛娘を悩ませる“不良資産”に変わっていたのだった。 

<おさらい>
暦年贈与は相続発生時に認められないケースが多い。面倒でも、贈る側と贈られる側で契約書を作成しておくといい。
相続時精算課税制度で得をするのは、「相続税がかからない人」や「贈与財産が相続発生時までに値上がりした人」。
ローンを組んでアパートを建て賃貸に出す相続税対策はリスクが高い。それが“不良資産”になる可能性も。

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≪目次≫
【第1章】本当にお得? 扶養や年金繰り下げ受給の落とし穴
年末調整の結果バレた娘の秘密のバイト収入
新・パート収入「150万円の壁」に振り回されるな!
「年金の繰り下げ受給がお得」にならない人もいる
【第2章】誰でもできる “税金をミニマム化する"制度活用法
"申告漏れ"はもったいない医療費控除の大いなる誤解
還元率は下がっても高所得者ほどやるべき「ふるさと納税」
稼いでも税金で持っていかれる「仮想通貨」課税の仕組み
【第3章】どうする? 相次ぐ税制改正が会社員の懐を直撃!
増税のターゲットになった「中高所得」会社員受難の時
もはや50代は“貯め時"ではない「年収1000万円破産」が急増! ?
特例解除の「2022年問題」で都心の土地が大暴落する?
【第4章】搾取額が大きい“相続迷宮"を抜け出すヒント
相続の命運を握る土地評価額8割カットの特例
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8割の人が追徴税を払う憂き目に! “本当に怖い"税務調査
払ってしまった相続税から「1億円」を取り戻せた理由
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