2015年からは相続税の非課税枠が縮小されたこともあり、自身の相続が心配になったDさんは制度の撤回を求めたが、相続時精算課税制度は一度適用してしまうと撤回不可能ということが分かった。

 制度を利用した場合は物納もできないと聞いた。Dさんは最近、自宅を早めに売却して高齢者住宅に移った方がいいのではないかと悩んでいる。 

 相続時精算課税制度利用のメリットが大きいのは、相続財産が少なく相続税がかからない人や、制度を使って贈与された資産が相続時に値上がりした人だ。

 いったん制度を適用してしまうと小規模宅地等の特例が利用できないといった不都合な点も多く、届け出をする前に専門家に相談するなどして、自分にとっての優位性を見極めたい。

王道のアパート経営に暗雲

 「相続対象となる宅地にローンを借りてアパートやマンションを建て、賃貸に供する」これは不動産における相続税節税の王道だ。しかし万全と思えたこの方法も、近年はほころびが目立つ。

 例えば、業者がアパートを一括借り上げし、オーナーに代わって入居者の募集や物件の管理などを行い、オーナーには毎月家賃から手数料を引いた金額が振り込まれるというシステムがある。

 家賃保証もなされると聞けば、自分に大家さん業が務まるのか不安を覚えていた人には、まさに渡りに舟と思えるかもしれない。

 実際に借り上げを行う際には、オーナーと業者の間で「○年ごとの更新」という契約が交わされる。しかし、更新のたびに建物は老朽化していくわけだから、結局、家賃は下げざるを得なくなる。

 半面、近くの工場や大学が移転するといった空室リスクが常に付きまとい、状況が変わったなどの理由で唐突に家賃保証の解除や契約打ち切りを通告された人も大勢いる。

東京・世田谷でも、3割が空室に……

 “住みたい街ランキング”に登場するような人気エリアでも万全ではない。

 都内在住のMさんは15年ほど前に父親を亡くした。一周忌を終えた後、世田谷区の実家に一人で暮らす母親から突然、「あなたへの相続が心配だから、家をアパートに建て替えることにした」と打ち明けられた。

 聞けば、親身になって話を聞いてくれる施工会社の営業マンがいて、相続対策にローンを組んで自宅を建て直し、2~3階部分をアパートとして貸し出すことを提案されたという。