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 この連載では、会社員が所得税や相続税といった「税負担」を減らすための“ツボ”と、策を講じて失敗しやすい“ドツボ”を、具体的な事例を交えて分かりやすく紹介する。

 今回は「贈与税」に関する話の後編。「相続時精算課税制度」を利用して後悔したDさんの事例を見ていこう。

(【監修】税理士法人ティータックスパートナーズ/
青山人事コンサルティング株式会社 佐藤 純)

 前回は「年間110万円以下なら大丈夫」と考えて暦年贈与を計画し、失敗に終わった例を取り上げた。生前贈与には、暦年贈与以外にも「相続時精算課税制度」を利用する人がいる。今回はこの制度を見ていこう。

 「相続時精算課税制度」は、60歳以上の直系尊属が20歳以上の直系卑属(推定相続人を含む)に贈与を行う際、2500万円まで贈与税が非課税になるという制度だ。ただし、これも注意点がある。

 自営業のDさんは、知人の勧めで妻と共にこの制度を利用することを決め、2005年に選択届出書を提出したのだが、今では「後悔しかない」と肩を落とす。

 Dさんには子供が2人おり、①夫から長子、②妻から長子、③夫から末子、④妻から末子のそれぞれ2500万円ずつの生前贈与を行うことで、計1億円を非課税で子供たちに資産移転できると目論んでいた。

 2007年に長子が、2010年に末子が自宅を購入する際に、この制度を駆使して夫婦合わせて5000万円ずつを贈与した。おかげで子供たちはローンを一切組むことなく、都心にマイホームのマンションを得た。

 しかし、2014年に妻が亡くなり相続税の申告を行った時、長子と末子が受け取っていた妻からの贈与分が相続財産に加算され、2人に相続税が課せられた。Dさんはこれに違和感を覚えた。

相続時精算課税制度は、「後で取られる」

 

 相続時精算課税制度では、相続が発生した際には「過去の贈与分も合算して課税」される。前出の暦年贈与は相続財産から除外されるので、そこが大きく違う。

 数億の資産を持つDさんや妻にとって暦年贈与のようなちまちました対策では実効が薄いように感じられ、この相続時精算課税制度に飛び付いたのだが、よくよく考えてみれば、相続時精算課税制度は相続発生までの“課税の繰り延べ”でしかなかった。