例えば課税所得800万円の会社員が年間で20万円の医療費を払ったとしよう。控除対象額は10万円をオーバーした10万円分となり、これに所得税率23%を掛けた2万3000円が還付金となる(復興特別所得税を除いて計算)。

仕送りしている親の分もまとめて申告できる

 出産したり大病・大ケガで入院したり手術を受けたりした年には、医療費の負担が10万円を超えることもあるだろう。そうでなくとも、医療費には本人分だけでなく家族の分も合算できる。夫婦と子供2人の4人家族であれば、全員の年間医療費が10万円を超えていれば医療費控除の対象となる。

 別居していても「生計を一にしている」人なら一緒にカウントできるので、例えば下宿して大学や専門学校に通う子供や、仕送りしている郷里の親などの医療費・介護費も合わせて申告することが可能だ。

10万円以下でも還付金がもらえるケースも

 一家に働き手が複数いる場合は、誰が申告しても構わない。

 一般的には納税額の多い人が申告した方が、税率が高い分、還付金が多くなる。ただし、例えば夫の所得が800万円でパートタイマーの妻の所得が100万円だとしたら、妻が申告すれば先の(2)の条件に該当し、10万円超のハードルが5万円(総所得100万円×5%)超まで下がり、家族の医療費の合計が10万円以下でも還付金を受け取れる。

「治療はOK、予防&美容はNG」で覚えておく

 医療費控除の申告で厄介なのは、「医療費」の解釈だ。つまり、どれが医療費として認められ、どれが認められないか。

 大まかな判断基準として覚えておきたいのが、「治療目的はOK」で、「予防目的や美容目的はNG」ということだ。

 具体的には、
◆病院での診療費、治療費
◆入院時の入院費(※)、食事代
◆妊娠や出産の際の定期検診代、出産費用
◆医師の処方箋を元に購入した医薬品代
◆治療に必要な医療器具の購入費
◆通院にかかった交通費
◆歯科の治療費
◆治療のためのリハビリ費用
◆介護保険の対象となる介護費
などは医療費として認定される。
※入院費の室料の差額については、治療のために必要な場合に限る

 判断が分かれるのは人間ドック代やマッサージ代、歯科矯正代などだ。

 人間ドックは異常が発見され、その後に治療を受けているならOK。異常なしの場合は一般的な健康診断、予防接種と同様にNG。

 マッサージは医師の勧めで腰痛などの治療に通っているならOKだが、疲労回復やリラクゼーションのためだとNGとなる。歯科矯正も子供はOKだが、大人は美容目的と思われる場合はNGだ。

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