給与や賞与の額が増えても、それを上回るペースで税金や社会保険料の額が引き上げられていたら、可処分所得は当然、減る。加えて、2019年には「消費税10%」、2020年には「会社員給与所得控除の改正」と、会社員いじめの“増税ラッシュ”が続く。そんな“取られっぱなし”の状態を放っておいていいのだろうか。
この連載では、会社員が所得税や相続税といった「税負担」を減らすための“ツボ”と、策を講じて失敗しやすい“ドツボ”を、具体的な事例を交えて分かりやすく紹介する。
今回は年末調整の結果、恥ずかしい体験をしたSさん(40代)のケースの後編。扶養から外れることで、家計にどんな影響が出てくるのか。
(【監修】税理士法人ティータックスパートナーズ/青山人事コンサルティング株式会社 佐藤 純)
バイト収入が年間103万円以下だったら……
前回「娘の“やばいバイト”が年末調整から露見」で、Sさんは扶養親族として届け出た大学生の娘が、自分に内緒でキャバクラに勤務していたことを知る。社内の人間にそれを知られてしまったこともショックだが、その後、Sさんの家計にも少なからぬ変化が! 今回は、娘が扶養から外れたことで生じる家計への影響について考えてみた。
そもそもSさんのケースでは、キャバクラに勤務していた大学生の娘は給与収入のみなので、年間収入が103万円までなら扶養親族のままでいられたことになる。ただし、例えば、高校生の息子やネットショップを運営する妻がいた場合、利益や所得が38万円を超えた時点でアウトで、扶養から外れる。
夫の年収が1120万円以下(給与収入のみの場合)で扶養親族の資格を満たす妻がいる場合、夫が受けられる配偶者控除は38万円だ(妻の年齢が70歳以上の場合は48万円)。
子供は年齢によって異なり、その年の12月31日時点で16歳以上18歳以下(高校生)と23歳以上(大学院生やフリーターなど)が38万円、19歳以上23歳未満の特定扶養親族が63万円となる。特定扶養親族への控除額が大きいのは、大学生の学費負担を考慮したものだ。
なお、70歳以上の老人扶養親族は同居時58万円、別居時48万円となっている。
妻と大学生・高校生の子供2人の4人家族で、夫婦双方の両親に仕送りをしているとすれば、控除額の合計は331万円。会社員なら年末調整のタイミングで控除額が年間の所得から差し引かれ、その分、所得税や翌年の住民税が減額される。
痛手が大きいのは「健康保険」から外れること
配偶者控除や扶養控除だけなら、扶養家族が1人減ったとしても手取り収入への影響は限られる。痛手が大きいのは、むしろ健康保険や年金の方だろう。
会社員の場合、毎月の給与から健康保険料が天引きされているが、保険料は本人の月収(標準報酬月額)によって決められており、扶養家族の有無は関係ない。
同じ保険料で何人もが基本3割負担の診療を受けられることを思えば、扶養家族が多い人ほど“お得”という見方もできる。
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