給与や賞与の額が増えても、それを上回るペースで税金や社会保険料の額が引き上げられていたら、可処分所得は当然、減る。加えて、2019年には「消費税10%」、2020年には「会社員給与所得控除の改正」と、会社員いじめの“増税ラッシュ”が続く。そんな“取られっぱなし”の状態を放っておいていいのだろうか。

 この連載では、会社員が所得税や相続税といった「税負担」を減らすための“ツボ”と、策を講じて失敗しやすい“ドツボ”を、具体的な事例を交えて分かりやすく紹介する。

 今回は年末調整の結果、恥ずかしい体験をしたSさん(40歳)の例を見ながら、「扶養」について学んでいこう。

(【監修】税理士法人ティータックスパートナーズ/
青山人事コンサルティング株式会社 佐藤 純)

突然、総務から呼び出されて……

 ある上場企業で管理職に就くSさん(40代)には、年末調整に関して今となっては思い出したくもない苦い記憶がある。それは、前年の年末調整から半年経った6月の蒸し暑い日のことだった。

 普段はほとんどやり取りのない総務の社員から突然内線があり、「お話ししたいことがあるのですが」と言う。業務で多忙を極めていた時期でもあり、「後にしてくれませんか」と返したが、「今すぐお話ししたいんです」と一歩も引かない。

 そこまで言われたら仕方ない。
 仏頂面で総務のフロアを訪ねたら、すぐさま会議室に通された そこでの話は、これ以上ない衝撃だった。

 

「大学生のお嬢さんがアルバイトをしていることはご存じですね?」

「妻から聞いていますが……」

「六本木の×××という会社にお勤めで、昨年は360万円ほどの収入があったようです」

「え!? 360万円? そんなはずは……。娘はカフェで週3日ほどアルバイトをしているはずですが」

「こちらで調べたところ、×××はいわゆるキャバクラを経営する会社のようです」

「キャバクラ!? うちの娘がキャバクラで働いているって言うんですか? 何をおっしゃっているのか分かりません……。そもそも、どうして総務にそんなことが分かるんですか?」

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