ここでは2年間に1万件の意見が入り、200もの改善や商品化につながったという。MUJI側からは、寄せられた意見を検討した結果の報告も随時アップデートされ、顧客とのやりとりが絶えず行われている。

IDEA PARKの仕組み
<font size="+1">IDEA PARKの仕組み</font>
良品計画ホームページ「IDEA PARKを見直しました。」より引用
http://idea.muji.net/rules2016

ライフスタイルの状況を詳しく観察する

 デザイン思考の具体的な行動の中でも重要なポイントのひとつがオブザベーション(観察)である。これは前掲のティム・ブラウンによると「人々のしないことに目を向け、言わないことに耳を傾ける」というプロセスだという。IDEO社では、プロジェクトの期間に集中的な観察期間が設けられて、人々のすること、しないこと、言うこと、言わないことに耳を傾けるそうだ。

 MUJIでも、開発メンバーが一般家庭を訪問し、生活者がどのように暮らしているか、モノがどのように使われているかといったライフスタイルの状況を詳しく観察する。

 ただし、MUJIとIDEOの観察する対象は異なるようである。イノベーションを生むことを目的に活動しているIDEOは、普通の人々の購買習慣を理解することよりも、極端な利用者(プロ、コレクター、マニア、奇人・変人、子供…)などの通常とは異なる人を観察することを重視している。ティム・ブラウンは、多くの普通の人々は正規分布の中央にある一番盛り上がった部分であるが、そこではなく両端を観察した方がイノベーティブな洞察が得られると述べている。

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