MUJIが提供している価値は、そうした人間にとって自然な「心地よさ」だといえる。つまり「体にフィットするソファ」の「気持ちよさ」は、世界中の人にとっても気持ちよい。MUJIは、このソファのように、世界中の人たちが気に入る商品を次々と送り出している。
「心地よさ」「快適さ」というのは、体へのフィット感だけでなく、暮らしの中で使いやすく、見た目にも自然で、機能を十分に果たしているということだ。暮らしを快適にしたいという欲求は世界共通であり、MUJIはその欲求をすくい上げている。
「デザイン思考」との共通点
MUJIの商品開発手法は、「デザイン思考」との共通点が多い。デザイン思考とは、アメリカのデザイン・コンサルタント会社IDEOにより提唱されたもので、創造力をいかに生み出すかに主眼をおいた思考方法である。その重要なポイントは、使い手の側に立った視点を重要視することだ。そして「そこには気がつかなかった!」というような提案をして、今までの常識を覆すような商品を生み出す。
MUJIの商品も、顧客に寄り添って開発され、今まで思いつかなかった「なるほど」「便利だ」という発見や驚きがある。良品計画のアドバイザリーボードの一人であるプロダクトデザイナーの深澤直人氏は、IDEO東京支社長を務めたこともあり、彼が毎週・毎月、デザイナーや経営層と接する過程において、MUJIの商品開発の考え方の中に、このデザイン思考が自然と取り入れられてきたとも考えられる。
デザイン思考では、「エンド・ユーザーに共感する」ことが提案されている。IDEOのCEOを務めるティム・ブラウンが著した『デザイン思考が世界を変える』(千葉敏生訳、2014年、早川書房)によると、「他者の目を通じて世界を観察し、他者の経験を通じて世界を理解し、他者の感情を通じて世界を感じ取る努力を行っている」という。
生活者と「会話」し、課題に寄り添う
MUJIの商品開発時も、生活者の日々の課題に寄り添うことを重要視している。また、たくさんの顧客の意見を聞きたいと思っている。そのためMUJIでは、生活者と「会話」する仕組みをいろいろと取り入れている。
たとえば、「くらしの良品研究所」を通じて暮らしにまつわるコラムを毎週発信するなどして、日々の暮らしをより良くしたい人々のコミュニティを形成している。MUJIのファンから、作ってほしい商品や既に販売している商品の改良の意見、販売されなくなってしまった商品の再販のリクエストなどができる「IDEA PARK」というコーナーもネット上にある。
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