ユニクロやニトリのように効率を追わない

 MUJIと同じ製造小売業を見ると、ファーストリテイリングのユニクロは衣料品、ニトリは生活雑貨と家具などのように、特定の専門分野に特化している。カテゴリーを絞り込んだほうが経営の効率は上がることは自明である。

 また、ブランドに関するセオリーでも、商品カテゴリーを広げ過ぎるとブランドイメージが希薄化していくリスクを伴うと言われている。

 カテゴリーキラーの製造小売業は、特定の商品カテゴリーにおいて競合他社と差別化し、優位性を築くことを目指す。自社の責任において商品を販売していくことから、あまりに幅広い品ぞろえにすると、管理がそれだけ複雑になる。製造や物流面における規模の経済を考慮しても、専門分野に特化して少品種大量生産がされる場合が多い。

 しかしMUJIは違う。MUJIは「選択と集中」という基本的なセオリーを明らかに踏み外している。経営資源には限りがあり、企業はその限られた資源を最適に配分していくことが経営の基本だとされるが、MUJIはそういうことをあまり気にしていない。

 MUJIほど幅広い品ぞろえの製造小売業はない。MUJIと真っ向から同じ品ぞろえで対抗しているブランドは存在しない。

独自の世界観で共通したブランドイメージを維持

 MUJIは、幅広いカテゴリーの商品を取りそろえているにもかかわらず、ある一定のブランドイメージをグローバルに保っている。なぜMUJIにはそれが可能なのか。詳しくは『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』で解説したが、MUJIのコンセプトにもとづいた商品開発で、その共通のイメージをつくりあげているからだ。だから、人によって思い浮かべる商品が違っても、MUJIには共通したイメージがある。

 そのイメージをざっくり言えば「シンプル」「自然」ということになる。MUJIは「シンプルで自然な生活用品のブランド」として幅広い商品を提供し、その思想を世界の人に受け入れてもらっている。

 逆に考えると、MUJIは商品分野を絞らず、ライフスタイルに関連する品ぞろえを幅広く実現していることによって、MUJIの世界観を確立しているとも言える。

 MUJIは基本方針として「感じ良いくらしの実現」を掲げている。つまり生活を快適にする商品を幅広く品ぞろえすることによってこそ、MUJIの世界観は伝わる。「感じ良いくらし」という、とても広く、普遍的なことを追求しているからこそ、世界の人に愛されるのだ。

「10人に1人がわかってくれればいい」

 では、なぜMUJIの商品カテゴリーはこんなにも広がっているのだろうか。さらにはキャンプ場の運営、住宅の販売などにも事業は広がっているのは、なぜだろうか。その点について、良品計画の金井政明会長は次のように話す。

 「もともと無印良品の商品は、皆が好きになってくれる商品と思っていませんでした。無印良品の思想を理解してくれる人は、10人に1人くらい、あるいはそれ以下かもしれないと思っていました。無印良品ができた当初、多くの人がブランドにあこがれた時代である1980年代に「生成(きなり)」を出すわけです。半晒しのティッシュも詰め替えて使うようなものを出すわけです。このような思想は、当時はイノベーティブで、新しく成熟した考え方であって、皆には理解されないと思っていました。

 そして10人に1人に売れましたという時に、普通の会社であれば、その商品を1人でなく20人に、そして50人に売れるように販促をかけると思います。無印良品では、その1人の理解してくれたお客様が使ってくれるアイテムを増やしていったのです。そして男女、年齢、お金を持っているかどうかなどに関係なく、無印良品の思想をわかってくれる人が使ってくれるアイテムがどんどん増えていったのです」