MUJIはKUMONに似ている?

 このような考え方がMUJIのグローバル展開の成功に結びついたわけだが、まったく違う分野に、MUJIと似たグローバル展開の成功例がある。それはKUMON(公文教育研究会)である。世界的に普遍性がある商品・サービスを提供しているという点で、KUMONとMUJIはよく似ている。

 KUMONのグローバル化は、日本のサービス産業の国際化の成功事例とされる。KUMONのホームページにある公開データによると、日本国内の学習者数151万人に対し、海外では48の国と地域に教室があり、学習者数は276万人に達し、日本を上回っている(2016年3月時点)。

 KUMONが世界に広げているメソッド(公文式学習)は、読み、書き、算数といった基礎学力の向上が基本である。学習者のレベルに合った教材を指導者が与える「ちょうどの学習」により、楽にできることから始めて、少しずつ難度を上げながら、高い学力と自分で学ぶ力を着実に身に付けることを目標としている。

【図】 KUMONの考え方
世界的に普遍性がある商品・サービスを提供しているという点で、KUMON(公文教育研究会)とMUJI(無印良品)はよく似ている。

 基礎的な計算や読み書きは、世界中どこでも需要がある。自学自習というKUMONの考え方は、学ぶ態度を形成することである。それは世界中の親たちが子供に期待することでもある。だからKUMONのメソッドは世界中で受け入れられる。

 教育というのは国による違いがある。もし教える内容を、日本の受験勉強のようにそれぞれの国の事情に合わせたものにしてしまうと、グローバルには受け入れられにくい。KUMONはそうではなくて、基礎的な学力の向上を目指している。

個性の“一歩手前”で止める

 MUJIは日用品の全般に対して、人間の普遍的なニーズを満たす「これ『で』いい」のレベルの商品群を揃えている。顧客を絞ることなく、個性の一歩手前に引いた、最大公約数の満足を提供している。だから世界共通の商品として受け入れられている。

 「これ『で』いい」という考え方は、別の言い方をすると、「個性の一歩手前」で止めるということだ。個人の好みを具現化せず、少し引いて見たデザインの商品であれば、汎用的になり、許容できる消費者の数はグンと増える。使い方も広がる。

 ただしMUJIはそもそもターゲットを広くしようとして、「これ『で』いい」という考え方をしたわけではない。むしろ、少なくてもいいので自分たちの考え方を理解してくれる人に商品を届けたいと考えた(その点は次回の「アンチテーゼ」で取り上げる)。顧客を分けるマーケティングというより、顧客を創造するイノベーションこそがMUJIの原点にある。

 MUJIの商品カテゴリーは幅広いが、「感じ良いくらし」という目指す姿に対して商品が合致しているか否かが、一定の線引きとなっている。その線引きが、「これ『で』いい」にあたる。

増田明子著/日経BP社/1620円(税込)
 なぜ無印良品(MUJI)は世界中の人から好かれるのか? MUJIの商品開発に10年間携わり、現在はマーケティングの研究者になった著者が、MUJIが大事にしている考え方、商品開発の体制、戦略のユニークさなど、MUJIの秘密をわかりやすく解説。MUJIが好きな人、MUJIが好調な理由を知りたい人、商品開発を担当する人、事業のグローバル展開に関わる人など、誰が読んでもヒントが得られるマーケティング入門書。