
やっぱり似ているかもしれない
乱暴な言い方ですけど、堤さんはお金もうけはうまくない人ですよね。
糸井:かもしれない。僕がそこまでも似たら本当に困るんですけど、でもやっぱり似ているかもしれない。最終的に何が喜んでもらえるかなというところまではたどり着くんだけど、お金にして回収するかどうかのところで、案外できていないことが。だから、いい番頭さんが必要ですよね。
お金儲け以外で考えると、会社を経営するという意欲はどこからでてくるのでしょうか。
糸井:自分がやりたいことはというと、それはやっぱりこのお店、あるいはこの企業と付き合って私はちょっと変わったみたいな、このお店と付き合ってよかったよ、ここから何か開けたというように、お客さんに感じてもらうことですね。西武は、そういうつもりはあったのです。
30代のときの原体験みたいなものがあるのですね。
糸井:ありますね。今、しゃべっていたら、堤さんの、まねしていたことが分かりました。フリーでやっているときは、全然そんなつもりはなかったので、会社をやってから思い出したんじゃないですか。
結局、今の世の中の軸は、損か得かだけになっています。ですが僕は、自分の満足という意味で、すごい欲張りですよね。ちっとも言うことを聞かないですもんね。お客の言うことさえも、聞かないですもんね。僕もそうですし、堤さんもそうだったと思います。お客さんに喜んでもらうためには、お客の言うことを聞いていちゃだめですよね。やっぱり次の姿というのは、アンケートを取ったり、マーケティングの結果でなく、もっと考えないと出てこないわけだから。
もしセゾンがなかったら、例えば糸井さんの、その後もずいぶん変わったかもしれませんね。
糸井:いまの僕はないでしょうね。セゾンの占める面積は大きいですね。自分が考えるフォーマットみたいなものも、あの時代、つまり30歳ぐらいのときに一生懸命やったことで作られました。セゾングループの広告は、長い文章を書く必要がありましたから、僕が一生懸命ものを書くというときの、基礎になっているような気がして。堤さんは、広告とか文章へのチェックは、すごいですよ。怒ったり直したりするというよりは、ここは少し何かあったほうがいいんじゃないかみたいな。それはさっきも言ったように、変えるときにはオルタナティブなアイデアがないといけないということです。
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