「日本」アピールでは長続きしない

小売の店舗だけでなく、ホテルなどにも広げながら、無印良品のコンセプトを発信していく必要があるということですね。

金井:無印良品が世に出た、最初のころに、例えば再生紙を使ったり、いろいろな意味で一般的な商品常識とは違うことをやって、当時はこんなもの売れないよとみんなに言われたわけですよ。割れた椎茸にしても。生成りのTシャツにしても。ところが10年、20年たつと、そういうものが当たり前になってくるわけ。オーガニックコットンにしても何にしても。そうすると、そこでの違いを出していくのは、なかなか難しいよね。要は再生紙のノートといったって、今そこら中で売っているわけですから。

 そうすると僕たちはやっぱり常に無印良品とは何ぞやということを、世に発信をする必要があるんですよね。だからそれがMUJIのホテルだったり、無印の住宅だったり、というわけです。現在、当社が取り組んでいる、里山を守ろうとか、シャッター通りを何とかしようというような活動も同じ意味です。

 常に世の中を見て、これはおかしいなとか、感じが悪いなということに対して、MUJIとして価値観はこうあるべきですよねということを提示していくのです。そうしたことによって、今はすごく当たり前になった商品も、もともと無印良品がパイオニアなんだということを、顧客が感じることにつながるのだと思います。製品そのものの競争ということで違いがなくなってきているけど、根っこでどんな精神性を持っているかということが多分大事なんだと思うんですよね。

常に新たな課題を探していくわけですね。

金井:探すというか、逆に生活者ということなんですよね。商売とか良品計画の社員である前にやっぱり1人の市民ということなんですよ。一般的な企業は会社に来て、自分の席に座るといきなり売る立場になっちゃう。そうならないように、ならないようにって、思っています。私が「中小企業でいたい」と言っている理由はそこなのですよね。

すでに海外店舗数が国内の店舗数を抜いている(英ロンドンの店舗)

すでに無印良品は国内店舗数より海外店舗の方が多くなっています。海外展開をするうえで「日本」のイメージは、消費者にアピールする要素のひとつになっていますか。

金井:今もアピールはしてないし、それをアピールしようとも1回も思ってないですね。そこで支持されるようでは長続きはしないのです。

 無印良品の誕生に大きな役割を果たしたアートディレクターの田中一光さんは、日本的なものを意図して表現しようとしたことは、あまりないでしょう。ただ、日本の伝統的なものの美しさにみんなが目をそらしていた時代に、彼は、そこに美の本質、表現の本質があると思っていました。彼が表現した無印良品の中には日本的な美意識、精神文化というのがやはりあるのです。

堤氏は、どのような発言をしていましたか。

金井:「堤さんは『日本らしい』ということで商売をしていると長く続かない」と言っていました。顧客に異文化を楽しんでもらっているうちに、早く価格と品質が合理的だと思ってもらえる構造を作らないといけないと、ずっと心配していました。

堤氏は、日本に比べて、海外の無印良品が割高に売られていることを、懸念していたそうですね。

金井:今も価格の問題は残っています。それは仕組みの問題です。現地である程度の店舗数とか、生産ロットがないとやっぱり価格を下げるというのは難しい。この課題をなんとかクリアしたいという事が僕たちの1つの大きな目標ですね。